第11話「温泉の中には(シャーシャー)」
我慢して洞窟を抜けた俺だったが、この場に着くや頭を抱える状況になっていた。
「シャーーーー。シャーーーーー」
「ふん、小娘、いや子猫娘か、我に立ち向かうとはいい度胸じゃな。貴様は」
ミィが背たけまである髪が逆立っている。心なしかお尻に生えている尻尾がぷらんぷらんと揺れている。
ただ、ミィの目の前にいる女の子、いや幼女と言っていいのだろうか、小学生もいかない、幼稚園児とも間違えられても仕方がない姿の子が目の前に居た。
顔も整っていて、目つきがきつい。背たけまでありそうな長い金髪の髪を団子上にして、括っていた。
ただ、俺はそれだけならば頭を抱えることもなく、「ちょい待てよ」と喧嘩を止めに行けばいいだけなんだが、その状況が現在不可能だった。なんせ、頭を抱える状況だったからだ。
「…………」
現在の俺は無言になりながら、顔を真っ赤にし、洞窟の岩場で隠れている。
「な、なんであいつら全裸なんだよ。全裸教でも拝めているのかよ」
天井から落ちる水滴が俺の頭に当たる。湯気が俺の視野を狭くする。温泉の硫黄の匂いが鼻につく。そして俺は頭を抱えた。
「そうだ、ここは温泉だった。全裸なの当り前じゃん」
ここはこいつらがどっか行くまでやり過ごすか?それとも今日は帰るか。家のお風呂も悪くないだろう。
俺は後ずさりをしながら、二人の裸を見ないように洞窟の方に向かっていると、
「あ、ご主人様!何をやってるニャン?こんなところで」
金髪御団子幼女を目で牽制しながら、俺に近づいてきた。来なくていいのに。ていうかタオルぐらい巻けよ。
「タオルは私には向かないニャン。野生児最高ニャン」
ああ、こいつに言った俺がバカだった。こいつは見た目猫っぽいし、性格までも動物だったか。
「それより、目の前にいる幼女は誰なんだよ。お前、こいつの事知っているのか?」
ミィは首を横に振りながらも、手をわきわきとさせながら、幼女にじりじりと迫りくる。
「知らないニャン。とりあえず、私のテリトリーに入ってきたからぶっ殺そうと」
「野生児!」
こいつ結構狂暴じゃないかよ。ぶっ殺す?俺の聞き間違いだ。そうに違いない。現実逃避をしながらも幼女に目をやる。だが羞恥心のかけらもなく堂々と、腕を組んで顎を上にあげてミィを見ている。
しーんと雰囲気が重くなる中、俺はどこに目をやればいいのかを考えながら、頭を掻いていると、金髪団子ヘアーの幼女が口を開ける。
「ふん、私はここの温泉に用があったのじゃ。入ろうとしたらいきなり杖で殴り掛かるのはどういう事なのだ。どこぞの勇者と変わらんじゃないか」
重い空気の中、口を開けたと思ったらとんでもないことを口走っていた。
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