第10話「いつもの日常(あくびも出るニャン)」

 足湯を堪能した俺は、一向に目を覚ますことがない(熟睡していた)ミィを放置し、他に反応を返してくれる人がいないので、部屋に戻ることにした。


「また明日にでも来るか。今度は服を入れられるようなカゴでも持ってこようかな。さてと、じゃあな、ミィ!明日も来るよ」

 心なしか、「にゃーん」と聞こえた気がした。愛猫ももしかしたらこの空間に着ているのかもしれないな。さてと、小説の続きを書いてから、ご飯食べて寝よう。

 俺は非日常的な空間で、日常的なことを考えていた。


___________



 翌日、いつの間にか太陽が出てきて、朝になっていた。俺はと言うとパソコンの画面と戦闘中だった。

「アイデアが浮かばねえ。やはりプロットから見直したほうがいいのかな」

 そんな悲痛な俺の叫びを聞いてくれるものは居なく、ため息が出るぜ。悲壮感、そんなものが俺の背中から感じてくるのは気にしないことにしている。


 俺はキョロキョロと周りを見渡した。そういえばミーの奴どこへ行ってるんだ?昨日からお菓子のマルコポーロすら食べていない。あいつ大丈夫なのだろうか。

 乾いた喉を潤いに、リビングに向かうと人の子ならぬ猫の子気配感じないことに気付いた。

 俺は唯一の家族であるミーが部屋のいないことにそわそわと感じていた。やはり猫ってそういう生き物なのだろうか。飼い主を冷や冷やとさせる動物、いつどこで何をしているのか分からない、気まぐれの動物なのだろうか。

「ああ、犬はいいよな。飼い主に従順だしな。ミー、どこに居るんだよ。撫でてやるから出て来いよ」

 そんな情けない言葉を声に出しながら、部屋中に聞こえるように叫んだ。


「にゃーん」

 そんな声が押し入れの近くから聞こえてくる。俺は押し入れがある部屋、自分がさっきまでいた俺の部屋に戻る。

 ひょっこりとあくびをしながら、ミーは押し入れの近くに居た。

 なんだそんなところに居たのか。どこかへ行ってしまったのかと思って内心ヒヤヒヤしてたぞ。

 俺はミーを撫でてやり、再び、パソコンの置いている机に向かった。ミーは心なしか、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。


 パソコンに文字を打ち込みながら、俺は顎に手を置きながら「うーん」と悩む。

「これは面白いのだろうか」

 時計をチラリと見ながら、息を吐く。小説を書いている人ならば実感はあるだろう。面白いと頭の中で思っていても、実際に文にしてみれば微妙な出来になってしまう事を。

 俺はギュッと、拳を握りしめて、「よし」と叫ぶ。

「今日は温泉に行って身体を温めに行こう。せっかくの天然温泉だ。何かアイデアがわくだろう。よし、善は急げだ」

 椅子から立ち上がりキッチンに向かう、冷蔵庫に入ってあったミックスオレが入った未開封のペットボトルを手に取ると、俺は気分を良く洞窟に向かった。

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