第9話「温泉作り(にゃにゃにゃー)」
荷物を持ちながら、懐中電灯の光りを頼りに押し入れの中にある洞窟に入っていく。
やはり闇、真っ暗だ。入ると感じる冷たい雰囲気は、最初に入った時から慣れない。背筋がぞくりと感じる感覚には手汗が出てくる。
「ここを通るのさえなければな」
ボソリと俺は漏らす。突然できた温泉だ。癒されるために楽園を作る。そんな俺の野望の為にもここは我慢すべきなのだろうか。
気持ち悪い気分を我慢して、歩いていくうちに、懐中電灯の明かりから湯けむりの湯気が見えた。次第に闇が消えていき、目的の温泉の場所に着いたみたいだ。
すると、俺の気配を察したのか温泉近くから声が聞こえてくる。
「遅かったにゃん。一体にゃんの荷物を持っているニャン?」
少しばかり、頬が赤くなっているミィが話しかけてきた。またも温泉にでも入ったのだろうか、今回はタオルを身体に撒いていた。
ただ今回は柑橘系の石鹸の匂いがする。身体を洗ったのだろうか。お風呂に入ってのぼせて顔が赤いのかもしれないな。
「いやー。この温泉をもっと癒しなものにしたいからな。もっと快適にな」
俺はミィに荷物が入った袋を見せた。ミィは覗き込む。
「このボトルはまさかにゃん。……、なんにゃん?」
「いや、知らないのかよ。まあいいや、この中にはシャンプーやリンス、石鹸とか入ってる。温泉には必須のアイテムだよ」
「にゃーん。凄いニャン。さすがニャン」
「いや、そこまで褒められるとなんだか照れるよ」
必要最低限のものを買ってきただけなのだけどな。けど驚くのはまだ早いぜ。俺はどや顔を見せながら、ミィに買ってきたものを見せる。ミィは驚きの表情を見せる。
「これは、にゃにゃにゃにゃにゃー」
「どういうテンションだよ。お前」
喜んでいるのか驚いているのか、はっきりしてほしいのだけど。俺は木のすのこを見せた。
「これはにゃにに使うものなのにゃん?」
ミィは首を傾げながら、頭にハテナマークを浮かべている。そんなミィにドヤ顔をするかのように「こう使うものなんだよ」とだけ言って、木のすのこを温泉近くに置いていく。
「どうだ、ミィ!すのこを置くだけで見た目が温泉ぽくなっただろう。それにこれは温泉から出た時、下は砂地交じりの砂利だしな。これだけでも快適になるはずだ」
俺はそう、ミィに告げると「にゃーん」と木のすのこに横になる。
「こうしたら眠くなるニャン。ちょっとしたら起きるから……」
ミィは手をにぎにぎしながら、うーんと背伸びをして、いつの間にか目が虚ろになっていた。
温泉でも浸かってて、のぼせたのだろうか。うーん。横になれるようにもっとすのこを買ってきたほうがいいのかな。確かにミィを見ているとお風呂上りの状態で身体を冷やすのって気持ちのはわかる。熱すぎるのも気持ち悪いしな。寝転がれる場所も作ろう。
俺は自分が持ってきたすのこを寝転んでいるミィの姿を横目に、買ってきていた物を置いていく。
「よーし、もう少し頑張るか、癒しの環境にできればこっちのものだしな。おい、ミィ、お前も何か……、もうこんな所で寝たら風邪ひくぞ」
「にゃんにゃん、あと十分……、むにゃむにゃzzz」
俺は持ってきていたタオルをミィに何枚も被せてやり、ここは電気、家電は使えるのだろうかと考えながら、足湯を堪能していた。
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