第3話 ぶつかりあい宇宙 前編
宇宙へと異動したチョコミント。彼を待っていたのは新たな職場、地球統一政府軍の新造艦である宇宙空母ボックスと生まれ変わった愛機だった。
「どうだい? 前より装甲を強化しただけでなく、ジェネレーター出力も機体の運動性も三十%アップだ」
機体が並ぶハンガーでエンジニアから新たな愛機、フルアーマークールのスペックを端末で見せられるチョコミント。
「数値が確かかは、実戦で試させてもらうぜ」
以前より装甲が増し、マッシヴなフォルムになった愛機を見る。
機体のカラーはミントグリーンのままだが背にはスラスター、双肩にはビーム砲、左右の手首にはそれぞれビームシールドとビームサーベルが付けられて腰回りにはエネルギーパックの弾帯とビーム兵器重視の機体に作り変えられた。
「ビームサイズは無くなったのか?」
好んで使っていた兵器がないのでエンジニアに聞いてみる。
「両肩のビーム砲は取り外せば、ビームサイズに変形させられるよ。しかし、何で白兵武器を鎌の形状に拘ってるんだい?」
エンジニアが端末に表示された機体のグラフィックを操作して説明する。
「こう見えて、二丁鎌や長い鎌を使った武術のブラックベルトなんでね」
軽く事実だけを語る。
一方、宇宙艦隊への異動に成功したリッチ・ガリも旗艦のハンガーで自分専用の機体である白牛を眺めて喜んでいた。
「ついに私の白牛が完成した、この白牛で私は成り上がる!」
頭部に牛の角型のアンテナを生やしたモノアイの白い巨人、白牛。
「統一政府軍のラクトなど恐れるに足らず! 我が白牛で蹴散らしてくれる!」
リッチは燃えていた、基地司令ではなく戦場こそが自分の居場所だと信じていた。
戦場の闘牛と化したリッチが、青緑の死神と出会うのは時間の問題だった。
統一政府軍の宇宙空母ボックスは、テストを兼ねて氷菓帝国との競合宙域の偵察任務を命じられ宇宙の海を進んでいた。
機動兵器であるラクトのパイロット達は、ハンガー内の待機所と言う名の休憩所で休息を取っていた。
「空母一隻で偵察って、上は何を考えてるんだか?」
コーヒーを飲みながらチョコミントが呟く。
「上の考えなんてわからんよ、俺達パイロットは自分の家である艦を守るだけだ」
眼鏡をかけた優男のマッチャが答える。
「マッチャは、僕達と変わらない年齢なのに落ち着いてるね~♪」
マッチャをからかうように語りかけるのは金髪の青年、バニラ。
「落ち着いてるわけじゃない、自分の暮らしを守る為に戦うだけだ」
バニラに答えるマッチャ。
「まあ、この艦が俺達の家と言っちゃ家だよな。狭い個室とはいえ」
チョコミントもマッチャに同意する。
「そういや二人は何で軍に入って戦おうって思ったの?」
バニラがマッチャとチョコミントに尋ねる。
「何でか? 生活の為だ、会社員より稼げるし休めるからな。そう言うバニラはどうなんだ?」
マッチャは生活の為に戦うと答える。
「僕は、成り行きかな? 親も軍人だったし、チョコミントは?」
バニラはあっさりと成り行きと答えた。
「俺はラクト乗りに憧れていたからだ、ラクトに乗るには軍しかないから士官学校
に向けて猛勉強して入ってからは毎日ランニングやら訓練でここまで来た」
自分で答えて見て、チョコミントは改めて自分が軍人らしくないなと思った。
「憧れて頑張ってって、良いよね♪ 二人とも意識持って来たって格好良いよ♪」
バニラは素直に二人をほめた。
「褒めても何も出せんぞ? 俺は男に使う金は無いからな♪」
そんなバニラにマッチャは笑顔で冗談交じりに答える。
「マッチャはお金ばっかりだね、貯まってるみたいだけど何に使うのさ?」
バニラがマッチャの冗談に笑う。
「家を買ったり将来の人生設計に使うんだよ、お前らも貯金しておけって」
マッチャは、貯金から金の話をしようとする。
「僕は軍住宅で充分だよ、家より趣味にお金は使いたい」
バニラはマッチャの話を切る、それに対してマッチャは肩をすくめる。
「まあ、今日も死なないように適度に働こう」
チョコミントが二人に言う、新たな仲間と交流しつつ次の出撃はいつだろうと考えていた。
「そうだね、今日も生きる為に戦おう♪」
バニラが拳を突き上げる、その拳にマッチャとチョコミントも拳を合わせる。
チョコミントが新たな仲間と交流を深めている中、リッチは白牛のテストと称して単騎で自分の艦を出て来ていた。
「ふう、コックピットは良い物だ。人間関係に気を使わなくて済む」
リッチの勝手な行動は、軍人としては褒められたものではなかった。
だが、艦の方でも艦長と同階級の大佐で政府要人の弟と言う厄介な立場のリッチを持て余しており艦の行動に余計な口を挟まないならばと好きにさせていた。
コンソロールを操作し、兵装を見てビームバルカンを選択。
「適当に、隕石を撃ってみるか」
スティックの引き金を引き発射、モニターで標的の破砕を確認する。
「標準にズレは無しだな、都合よく戦闘の機会が巡って来ない物だろうか? 早く白牛を実戦で暴れさせたい」
リッチの願いがこの後叶う事になるとは、当人も予想していなかった。
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