茉優の失踪 1

 図書館での事件の夜、僕は茉優と自分の部屋にいた。


 かぐやは気を利かせ、秋夏たちと雑談している。


「ま、茉優。本当にいいんだね?」

「そんなこと、訊かないでよ」


 彼女は弱々しい声でそう答えた。そして、僕は彼女の服に手を掛けた。




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※自主規制※


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「今日は夜遅いし泊まってく?」

「うん。こうなると思ってお父さんたちにはもう言ってきてあるの」

「大丈夫だったの? お父さん、この前凄かったけど」

「もちろん!」


 ピースを顔の近くで決めて、にっこり笑う茉優を見ると少しおじさんが不憫になってしまう。


「今日はかぐやと寝ないの?」


 茉優の疑問は最もなのだ。両親のはからいにより僕とかぐやは二人でひと部屋なのだ。幸運にも、僕の部屋は一人でいるには広すぎると感じていた為、二人になって丁度よくなっている。


「どうだろう、ちょっと訊いてくるね」

「うん」


 部屋を出て、秋夏の部屋に行くとかぐやはそこで寝る、茉優と仲良くねと言っていた。



「大丈夫だって」

「そう!」


 茉優は目に見えて表情が明るくなった。


「まだ私のこと食べてもいいんだよ?」

「いやいや、本当は疲れてるんでしょ?」

「うっ、まぁ」


 図星だったのか言葉に詰まる茉優。


「でも、かぐやに負けちゃうし…」

「茉優も本当に魅力的だから負けてないよ。だから、今日はもう寝よう?」


 二人とも本当に僕にはもったいないくらいの美少女なんだ。そこに優劣はつけられないけど、心配になる必要はないよ。


「うん、おやすみ」

「おやすみ」


 一応布団は二セット用意してあるが、かぐやにしても、茉優にしても僕と同じ布団で寝たいみたいだ。


 二人とも女性特有の柔らかさを誇っていて、いい香りまでする。そしてその温もりは今の冬に到ろうとする季節にぴったりだ。


「ん~、だいしゅき」


 茉優はおやすみと言ってすぐ寝ていたみたいだ。そして、寝言を言いながら僕に腕を回してきた。


 お返しにおでこに軽くキスをして、今度こそ僕もおやすみだ。




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 今、起きた。


 隣にはいるはずの姿がない。そう、茉優がいないのだ。


 夢で彼女を失う気がした。でも、そんなことはないと自分に言い聞かせ、落ち着いて探している。


 僕を驚かせようと何処かに隠れているのだろうか。そう思ったが、部屋の中にはいないみたいだ。


 下に降りてみよう。


「あっ! 冬春おはよう!」

「冬春くんおはよう!」


 茉優はかぐやと台所に立っていた。時間的に朝食を作っているのだろうか。


「もう少しでできるからお父さんたち起こしてきて」

「わかったよ」



 父さんと母さんに秋夏。我が家ののんびり起きてくる住人が揃い、朝食だ。


「茉優ちゃんもなかなかの料理の腕前ね」

「ありがとうございます!」


 たまに雑誌にも紹介されるレベルの母さんに料理を褒められるのら嬉しいのだろう。


「ところで、冬春。今日もかぐやちゃんと茉優ちゃんとデートするのかな?」

「うん、そうしようかなって」

「どちらかに偏っちゃ駄目よ」

「わかってますよ。それより、このおかずはどっちがどれを作ったの?」

「どっちがどれというわけではないの」


 ありゃ、かぐやと茉優が二人で作ったのか。味噌汁までしっかり作って、胃袋を捕まれているのだろうか。


「食べ終わったら今度こそ私に街を紹介してね!」



 今日はショッピングモールから始まっている。というか、今日はここで終わる予定なんだけどね。


「冬春は何処か見てきていいよ?」

「えっ、あっ、うん。楽しんでね!」


 何故こうなったかというと、


「ここが街一番のショッピングモールだよ!」

「ショッピングモール?」

「簡潔に言うと、いろいろと買い物が出来るところかな」

「そうなんだ! じゃあ、私こっちの世界の服とかあまり持ってないから茉優と選びたいな~」

「確かにかぐやの少ないかも」

「じゃあ、私とかぐやで見てくるから、冬春は何処か見てきていいよ?」


 こういう経緯で僕は暇となった。これじゃあ、二人を平等にとか関係なくない?


「取り敢えず、本屋にでも行こうかな」


 そう呟き、歩き出したそのとき、


「冬春くんっ!」

「そんなに焦ってどうしたの?」

「ま、茉優が…」

「まさか、いなくなった、のか?」

「うん」


 僕が見た夢は予知夢かなんかだったのだろうか。


「か、かぐや。本当に茉優は消えたんだね?」

「一緒に服選んでたら、突然光に包まれて、それで…」


「冬春くん?」


「ごめん。タケトリ様に連絡してた」


 一応神様であるタケトリ様であれば、今回のことについて多少は分かることもあるのではないかと思って訊いてみたらビンゴ。龍王のところから帰るときに最後に言った発言を怪しんでいたタケトリ様が見張っていると案の定、龍王が行動に出たようだ。


「この前の龍王が連れて行ったみたいだよ」

「え、じゃあ助けられない?」


 かぐやが目に涙を溜めながら、弱々しい声で訊いてきた。


「大丈夫。後20秒でタケトリ様が連れて行ってくれるよ」

「ならよかったぁ。 え?」

「もうすぐだね。じゃあ、僕に掴まって!」

「え? うん」

「出発だ」


 僕の大切な人を勝手に連れて行った罪は大きいぞ、くそ龍王。今度は周りの民への被害は抑えて、王城を吹き飛ばしてやる。


 

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