2人とデート 1
「茉優、今日はありがとう。これからもライバルとしてよろしくね」
「えぇ、こちらこそよろしくね、かぐや」
あそこの二人には強い何かが生まれたみたいだ。そうなったのは、今から少し遡り、家族会終了後のこと。
母さんは意地悪く、かぐやと茉優の闘争心を燃えさせようとしていた。
「二人とも正妻となったわけだけど、もちろん満足なんてしてないわよね?」
「「これからが勝負です!」」
母さんのたった一言で、二人は大声で反応し顔を合わせて、にっと笑う。相性がはっちりみたいで何よりだ。そう思いながら見ていると、茉優が僕を指差して言った。
「これからもっともっ~と露骨なアピールするから、覚悟してて! 絶対にかぐやには負けないから!」
「私こそ、一日中冬春くんと一緒にいるわけだし、家の中… とかだったらもっと魅力的な服装をするわ!」
既に争いは始まっているみたいだ。僕はこれからどれだけ彼女らの魅力に翻弄されるのだろう。楽しみでもあったりする。
そして、それは翌日から始まった。
「かぐや、今日は土曜日だし、茉優も誘ってこの街を歩き回ろうか?」
「うん! まだ、こっちに来て2日目だから全然知らないし楽しみだよ!」
そう言いながらかぐやは僕に抱きついてきた。彼女の胸の柔らかさを十二分に腕で朝から堪能出来て幸せだ。
「茉優にも連絡しないと」
「もしもし?」
「冬春、どうしたの? 朝から私の声を聴きたかったの?」
「そうではないけど、デートの誘いかな」
「で、デート!? すぐに準備するから待ってて!」
「じゃあ、10時頃そっちにかぐやと迎えに行くよ」
「分かったわ、それじゃあね」
今は9時。僕は起きたばっかりである。今日もかぐやに起こされた。彼女によると朝起こすのは妻の役目だそうだ。多分このことは茉優には言わない方がいい気がする。茉優のことだから、どんなことでも絶対に実行するからな。
「かぐやはもう朝ご飯食べたの?」
「冬春くんを置いて先に食べるはずがないでしょ?」
指で僕のお腹をつんつんしながら、見上げるように言ってくる。元から身長差から見上げるようになっているが、それに意図が加わるとなんとも可愛いことになっている。僕も突っつきたくなりやろうとしたら、光になった。きと影になりぬ。
「女子のお腹をつんつんしようとしたわね? それは事前に言って覚悟を決めないとダメ!」
「ごめん!」
「もちろん許します、でもお詫びに今日は楽しませてね!」
「もちろんだよ! それじゃあ、ご飯食べに行こうか」
下に降りるとリビングの電気はついていない。僕の家では休日になるとよくこの光景を見る。全員朝が弱いため、10時近くまで寝ているのだ。
「冬春くん、ご飯の準備するから着替えとかしてていいよ」
「素晴らしい新妻だなぁ! ありがとう!」
まだこっちで結婚はしてないけど、一度儀式はしてるからもう夫婦なのさ。あっちにいた頃は、使用人の人たちの手伝いという形だったからあまりこんな風なことはしてこなかったから、興奮している。
「おっ! お前たちもう起きてたのか、おはよう」
「おはようございます!」
僕たちが二人で食べていると父さんと母さんが起きてきた。母さんは起床後少しの間はぼけっとしていて、挨拶も出来ないダメな人間だ。かぐやは既に元気いっぱいみたいだ。
「お父様たちの分も作ってあるので食べて下さいね!」
「ありがとう! 柚葉と違って朝から気が利くね」
「ごつんっ」
ぼけっとしていた母さんの意識が瞬時に覚醒し、父さんにちょっと怒りをぶつけた。ちょっとだけだ。ちなみにかぐやがお義父さまではなく、お父様なのは本当の父親が誰か分からないかららしい。
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「かぐやも準備終わってるみたいだからもう茉優の家に向かっちゃおう」
「うん! それでは、いってきます!」
「ふんふんふふ~ん♪」
かぐやは上機嫌なのか、鼻歌をしながら僕の隣を歩いている。そして、その周りを光が点滅していた。
「この点滅してる光はあっちでもあった嬉しいときに現れるやつ?」
「そう、覚えててくれたんだ!」
「まぁね」
犬が興奮しているときや嬉しいときに尻尾を振るみたいに、かぐやは上機嫌なときに周囲に点滅する光を出すのだ。ちなみに学校で僕を見つけた時もそうなっていたから、普通に人に見られたらどうとかそういうことはなさそうど。
「ピーンポーン」
「茉優はいますか?」
「冬春! 今行くから待っててね」
茉優のことを待っていると、綺麗な純白の大きめの鳥がかぐやの傍に降り立った。白鳥だった。軽く会釈のようなものをしてすぐに飛び立っていった。
「今のは何だったんだ?」
「あの白鳥さんが、私に良い一日をお過ごし下さいみたいなことを言ってたよ」
「鳥と会話できるの!?」
「うん、ある程度以上の大きさがある動物とだったらどの子とでも」
新しい力が発見され、驚いていると茉優、ではなく彼女の父親がずんずんとこちらに向かって歩いてきた。
「おはよう、冬春くん」
「おはようございます、おじさん」
「そちらの麗しいお嬢さんもおはようございます」
「おはようございます!」
おじさんは僕とじっと目を合わせて何かを言っているように感じた。
『茉優のことをどう思っているんだ』
頭の中におじさんの声が流れてきた。スキルの完全言語理解が訳しちゃったのか。そしてやはり、茉優のことか。この人の茉優の溺愛ぶりもなかなかなものだから仕方が無いけど。
「私が何を言いたいかわかるかい?」
「茉優のことですか?」
あえて、一発で当てることはぜず、アバウトに答える。ここは、素直に答えてはいけない。茉優が来るまで引き延ばせれば良いんだ。
「娘に聞いたら既に、その娘と結婚し」
「お父さん、何やってるの!!」
「ま、茉優?」
「な、ん、で、やっ、て、る、の?」
「お前のためを思って尋ねておこうかなと…」
「私が自分で決めたんだから、問題ないはずよ! 口を挟まないで!」
「は、はい…」
おじさんは本心から茉優のためにやっていたらしく、目が光を失い、生気が薄くなっていた。
「行きましょう」
「おじさんはいいの?」
「昨日の夜帰ってからずっとあれだから、いいの」
「そ、そう」
「それより、私の服装はどう?」
茉優の服装を見ると、今日は白でフリルのある服にパンツにピンクベージュのコートで彼女の茶髪ぽい髪色も相まって凄く似合っている。綺麗な脚のラインも出ていて満足!
「髪色とも合ってるし、綺麗な脚も映えてるし、似合ってるよ!」
「ありがとう!」
茉優は拳を握って大喜びしている。センスのあまり無い僕にしてはまともなコメントだっただろうと思う。
「いててててっ」
突然腕に尋常ではない痛みを感じ、隣を見るとむすっとしたかぐやが僕の方を見ていた。そう言えばかぐやの服装に感想言ってなかったかも。そう思い改めてかぐやを見ると、グレーのヘアバンドに、白に黒ラインのニットを着て、ジャケットに黒のフレアスカート。凄く可愛い。それ以外の言葉が出て来ない。
「凄く可愛いよ…」
「うん…」
かぐやは一瞬でたこのように顔を紅潮させ、照れて俯いた。僕まで恥ずかしくなってきた。
「もー、早く行こう!」
見かねた茉優が腕を取って少し強引に歩き出した。
「かぐやも行こう?」
「うん!」
そう言ってかぐやが僕の腕を取ることで、右にかぐや、左に茉優と正しく両手に花を体現した状態になった。さらに、両腕はなんとも柔らかいものに包まれることにもなった。
街に向かうと午前からデート中のカップルもそこそこおり、僕の両側に視線を奪われ物理攻撃を受けている人がいる。なんか、お疲れ様です…
「まずは、散歩しよう!」
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