戻ってきた日常生活?

 かぐやと防音スキルについて話をしたのは今朝の話。今は8:10。学校だ。予習は結局手に負えなかった為、今やっているが素晴らしいことが判明した。


 ステータスの賢さの効果は学生に対して絶大だった。僕は高2だが、受験生だったら特に欲する記憶力、理解力。この2つを、なんと! 恐ろしい次元にまで引き上げてくれるのだ。その結果、


「冬春くん、ここの問題を黒板に書いてもらえるかな?」

「分かりました」


 予習をほとんどやれていないのに、すらすら書ける。予習やってた時代を懐かしみながら、授業に臨んでいる。もはや、快感すらある。


「きーんこーんかーんこーん」


 チャイムが鳴り出した。1時間目の数学を余裕で乗り切ってしまった。




 そして、その後の英語を始めとする授業を楽々と終えて昼休みを迎えた。いつも通り、友人の弘樹と大樹とご飯を食べようと弁当を広げていると、誰かが近付いてきた。


「冬春! 彼女出来たでしょ!」

「!? 急にどうしたんだ、茉優」


 さっきの弘樹と大樹と差があるが、茉優の説明はしよう。茉優は、幼馴染みで、中学校位までは近所ということもあり、一緒に登校していた。容姿は明るくて包み込んでくれる優しさを持つ美少女という評価をクラスの男子から得ている。後、巨乳だったりする。ここで、なぜ他人からと言ったかというと、僕はさっきの言葉からも分かると思うが、あまりそう感じていないという単純な理由からだ。


「別にそんなことないよ?」


 ふっ、解説を入れることで完全に内心の焦りを消し、平常心と笑顔で対応してやったぜ。これで、大丈夫な、はず? な、なぜお前は顎に手をあてて考え込んでいるんだ。


「冬春、それは嘘でしょ。絶対に出来たはず」

「そんなに見詰めるなって、落ち着いて僕の様子を見てれば良いでしょ?」

「うーん、じゃあおばさんに聞いちゃおう!」

「まっ」

 

 危ない。待てと言いそうになったが、途中で止めた。これは完全に茉優のペースに乗せられている。今のは自分からボロを出すとこだった。だが、母さんに尋ねられるのはまずい。あの人、茉優相手だと笑顔で話しちゃうからな…


「別にそうすれば~」

「うっ、いいもん。聞いちゃうからねーだ」


 そう言って奴は去って行った。まさに、奴は怪獣。突如として現れ、僕の心という名の街を破壊し去って行く。対処法はない。撃退方法は、我慢するしかない。


「お前は羨ましいやつだな、茉優さんとあんな風に話せて。まるで痴話喧嘩」

「弘樹、それ以上言わないでくれ、あいつとはそんな関係はない!」

「じゃあ、俺狙っちゃうからな! なぁ、大樹!」

「俺はもともと茉優ちゃんのこと好きだったから狙ってるけどね」

「ら、ライバルか、くっ…」


 そうこうしている内に、昼休みももう少しになった。ちょっと、昼食後の休憩がてら校内の散歩にでも行こうか、な。


「おいおい、あの女子可愛いないか?」

「ん? どれ?」


 周囲に視線を一心に集めた少女が、こっちに向かって手を振っている。気のせいではなく、僕に向かってだ。見覚えのある美少女がいる。何で、何で、


「かぐやがここにいるんだ!?」

「冬春くん、朝ぶりだね!」

「ここで話し掛けたら、まずっ、い」

「むっ。あなた誰?」


 ベストタイミング過ぎるだろ。まさかのこの空間に友だちと会話しながらやって来た茉優の登場。最悪の展開しか見えないよぅ、どうしましょう…


「私、かぐやと言います。よろしくお願いしますね?」

「私は西岡茉優。冬春の幼馴染みよ! かぐやさん、苗字は名乗らないのかしら?」

「苗字は無いですが、敢えて名乗ると言うのなら宵です」

「宵!? 何者なの?」

「冬春くんのお嫁さんです!」





「えっ?」


 周りに静寂の空間が訪れた。若干一部分から悲鳴が聞こえているが大体が静かになっている。(「嘘だろ~!! なぜ、あいつばっかりそんな… 羨まし過ぎだろ! 顔とスタイルが良いからって、後勉強に…」)


 今の一瞬で、時の止まった空間の中で僕はかぐやがここに現れた理由を見つけた。彼女に付き添っていた教頭だ。これは、彼女がこの学校に通うことと、今日は見学をしているということを意味している。何で誰もかぐやが来るって言ってくれなかったんだ。


 こうなった以上、かぐやの笑顔以外、全てが固まった空間で僕がやることは1つ。仲裁だ。


「かぐや? 茉優? そこで止めようか?」

「冬春! 何なのこの女はあなたの嫁ですって? それは私のポジションのはずよ! ずっとずっ~と待ってたのに、何でもう座られてるのよ!」





「「えっ?」」


 今度は僕とかぐやが固まる番だった。茉優が僕の嫁の座を狙ってただって? 鈍感系主人公をしていたつもりはないが、茉優との会話がほとんど日常生活の一部となっていたから、考えたことも無かった。


 かぐやもかぐやで、まさか初めて会った女が急に嫁だとか言い出すから驚いているのだろうか。


「ぱんぱん」


 助け船が来た!


「ほらほら、続きが連ドラを超える視聴率になりそうなとこ申し訳ないが、後2分で授業になるぞ~」


 助かった~。ほんとにほっとした。これが束の間の安心と分かっているが、後から大変だと分かっているが僕は全身から力が抜けてくのを感じていた。



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