第9話 押しかけアイドル

彼女と過ごしていたマンションへ帰ってきた。

いつもと変わらない、そのはずだった。


「ただいま」


「あ、おかえりなさい」

普段なら聞こえない声が聞こえ、思わずビクッとしてしまう。


「何でいるんだよ」


そこにはエプロンをつけたアイドル、深海明日香がいた。


「何って夕ご飯を作ってるんですよ」


「いや、そうじゃなくて」


「もしかしてもう食べてきちゃいました?」

彼女が近づき俺のスーツの匂いを嗅ぐ。


「ちょ、離れてくれ」


「え〜、いいじゃないですか。優也さんの匂い好きですよ」


「!?」


「あの、名前で呼んじゃいけなかったですか?」

くっついたまま離れない彼女。顔は見えない。


「いや、それはいいけど、何でここにいるのか俺は聞きたい」


名残惜しそうに俺から離れる。


「したい事をしにきました」


嬉しそうに彼女は笑った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る