第6話 お別れとオムライス

「ごめんなさい」

水族館からの帰り際、彼女が頭を下げた。


「おじさんに甘えてしまいました。私の問題なのに」

笑顔に戻った彼女が言う。


「いや、少しは息抜きになった?」


「はい!ありがとうございました」

少しだけ吹っ切れたような顔をしていた。


「今日は、昨日もですけど、本当に楽しかったです」


「休日は終わりか?」


「・・・はい。色々お世話になりました」

そう言って、もう一度お辞儀をした。


「ここでお別れです」


「そうか」

少ししんみりしてしまう。


「そうだ、最後に私に何か聞いて欲しいお願いありますか?」


「お願い?」


「はい、不公平じゃないですか、私だけ我儘言うの。だから私も

 おじさんのお願いを聞きたいんです」


「うーん・・・そうだな、休日は今日までだろう?」


「はいっ!終電までなら大丈夫です。あっ、でもエッチなお願いは

 ダメですよ。これでも私、アイドルですから」

腰に手を当てながら言う彼女。


「わかってるよ。なら一ついいか」


「はい、なんですか?」


「夕飯、何食べたい?」


「はい?」

俺の言葉に彼女は困惑していた。




「わぁ〜オムライス。美味しそう、いただきます」


「いただきます」

あの後、困惑する彼女を俺は家まで連れて行き、彼女のリクエスト

通りオムライスを作った。


「美味しいです。お母さんの味です」

嬉しそうにオムライスを頬張る。


「おふくろ直伝だからな」


「お母さん料理上手だったんですか?」


「ああ」


「私のお母さんは料理が苦手で。でも、オムライスだけは

 美味しんです」


「そうか」


「はい!小さい時はいつも頼んで作ってもらいまいした」


「そうか」


「今は、今はあまり仲は良くないです。心配はしてくれてますけど

 関係性が変わっちゃって・・・」

彼女の顔が曇る。



「・・・どうしたい?」

俺は真剣な表情で言った。


「はい?」

彼女の手が止まる。




「深海明日香、君はこれからどうしたい?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る