第3話 今は無職な子

「すみません。私、脱ぎ癖があって」

恥ずかしそうに布団の中で着替える彼女。


(良かったぁ〜、犯罪者にならなくて)

俺は無言でベットから降りて思わず心の中でガッツポーズをした。


「あの、もう大丈夫です。服着ましたから」


俺が振り返ると、美少女がいた。


(昨日が二十歳の誕生日とか言ってたような?)

どう見ても女子高生くらいにしか見えない。


「改めて自己紹介です。深海明日香と言います。職業は歌手、じゃなくて

 今は無、無職です」

笑顔で挨拶をしていた彼女が急にどもり、言い直した。


「いや、テレビに出てた子でしょ?」

俺はテレビを指差した。


「うぐっ」

彼女が呻く。


「まぁ、事情は聞かないけど」

あまり関わらないほうが身の為だと思う。


「えっと、聞かないんですか?私の事」

彼女が驚く。


「誰にでも言いたくない事はあるよ」


「そ、そうですよね。ありがとうございます」

彼女は少しほっとしたようで、ベットに腰掛けた。


「あ、ひとつだけ聞いていい?」


「え、な、何でしょう?」

恐る恐る俺を見る彼女。


「昨日誕生日だったようだけど、焼き鳥屋で良かったの?」


「は?」


彼女は口を開けたまま、固まっていた。







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