第2話 酒は飲んでも少女は連れ込むな

「あのっ、お願いがあるんです」


「はい?」


白い帽子ににサングラス。青いカーディガンにジーンズの女の子が

道行く男性に声をかけている。


「す、すみません。急いでるので」

男性は足早に少女から離れていった。



あれはやばい、ついていったら怖いお兄さん達が

後ろで控えてるに違いない。


少女を見ながらバスを待つ。

帰って溜まってたドラマでも見るか。


「ハァ、寒いな」


「あの、」


「帰って風呂入って寝るか〜」


「あの、すみません・・・」


「焼き鳥もたらふく食ったし」


「や、焼き鳥ですか。食べたいです」


「さ、さぁ帰ろうか?」


見ないふりをして俺はバス停の時刻表に向かって喋る。


「あ、あの〜」

さっきまで離れた距離にいた女の子が俺の横まで来ていた。

無視しなければ。

「今日は月が綺麗だなぁ」


「え、告白ですか。初めて会ったのに・・・」


「違うわっ!」


「あっ!やっぱり聞こえてるんですね」

思わず突っ込んだ俺に少女が近寄り、サングラスから覗く大きめな目が面白そうに笑った。


「く、思わず突っ込んじまった!」


「あははっ!面白いおじさんですね」

少女が笑う。


「金ならないぞ!他を当たれっ!」

俺は彼女に一度だけ目を向け無関心を貫く。


「あ、お金なら沢山あります。」


「逆に!払う方なの?怖いんだけど!」

彼女が白い可愛いお財布を出すとそこには万札が30枚程あった。


「すげーな!そんなに寝たの?」


「は?これはお給料なのですが。寝たって・・・」

彼女がポカンとし、俺の言葉に返す。


「だってそれ出会い系で・・・」

俺は彼女に言うと


「出会い系?違いますよ!何言ってんですか」

何故か驚き、怒り出した彼女。


「えっ、違うの?」


「違いますよ。なんで私がそ、そんな事しなくちゃいけないんです」

途中から赤くなって俯く彼女。


「じゃあなんで周りの男に声を」


「ねぇ、あれもしかして・・・」

「ちょっと警察に電話した方が良くない?」


近くを歩いていたオバさんたちが俺たちを見てヒソヒソ話す。

聞こえてるよ。やめて俺の平凡を壊さないで。


「ちょっとこっちに」


「え、は、はい!」

俺は仕方なくバス停から離れ、彼女の手を引き近くのコンビニの前まで来る。


「さっきは悪かった。でも俺は君に関われない。

 早くお家に帰りな」

俺は彼女に言う。


「あの、お願いがあるんです」


・・・俺の話聞いてたかなこの子。


「この焼き鳥屋さんに連れてってください!」


「いや一人で行けよ」

突っ込んだ俺が見たのは、彼女が持っていたグルメランキングだった。


「一人で行くと襲われそうで」と、男に声をかけまくっていた彼女が言った。

襲われるより襲いそうだったよ、と思いながら仕方なく焼き鳥屋まで案内する。


「わぁ〜ここです。来たかったお店です」

はしゃぎながら彼女が俺に言う。


「じゃあこれで」


「え、ここで放り出すんですか、大人なのに?」

彼女が俺の服をつかみ逃さないようにする。


「いや、自分関係ないんで」


「ありがとうお父さん!ここ来たかったの」

急に俺に抱きついてくる彼女。


「いいなぁ俺にもあんな優しい娘が・・・」

「よせ、あんな娘がいてたまるか、幻想だよ幻想、くそがっ」

酒を飲んで赤くなってるサラリーマンや通行人が俺たちを見る。


俺の腕に抱きついていた彼女が舌を出して笑う。

嵌められた。


詐欺にあうかのような心情で、俺は数分前までいた焼き鳥屋に

入り直した。


「へいらっしゃ、い?」

焼き鳥屋の親父が先ほど出て行った俺とその隣の少女を見て固まった。




「ハァ〜、怪しまれちゃいましたかね、私達?」

彼女がため息とともに帽子とサングラスを取る。


「当たり前だ・・・」

下を向いていた俺が顔を上げるとそこには今まで会った事がない

綺麗な女の子がいた。


「あ、あの何か変ですか?」

固まったいた俺に彼女が恥ずかしげに言う。


「いや、綺麗だったもんでつい・・・」

思わず本音を言ってしまう。


「あ、ありがとうございます」

彼女がさらに照れるが、こちらはそれどころじゃない。


漆塗りのような艶のある長い髪。俺よりだいぶ小さめの顔

大きめの瞳が可愛い感じに見える。芸能界にスカウトされそうだ。


「あの、どれが一番おいしいですか?さっきまで食べてたんですよね?」

彼女が空気を変えるよに俺に尋ねた。



そこまでは覚えてる。そのあと確か、




「なんだかフラフラします」

ベットの中で彼女が頭を押さえながら呻く。


そうだ、二十歳のお祝いにお酒を飲みたいと言い出して

酔った彼女が帰れなくなったんだ。


ん?じゃあ何で彼女は裸?

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