いつも冷たく冷めた彼女
御劔 深夜
第1話 いつも冷たく冷めた彼女
「雪奈、雪奈。ゆーきーなっ!!」
起きて!!と俺は雪奈を揺らす。
全くいつも世話がやける。
まったく……今日はデートに行く予定なんだ――だったんだ。
それなのに一時間経った今でもまだ起きない。
しかしどうするか、このままだと本当にデートはキャンセルになってしまう。
それは困る。なんとかして起こさなければ。
原因の一つは俺にあるわけだし。
その原因とは何かというと……いっしょに暮らし、同じベッドで隣り合って寝ているにも関わらず、この時間まで起こさなかったことだ。
しかもこのままだと例え雪奈が起きたとしても、出かけることは出来ない。
なぜって?それは、まあ、雪奈が何の準備もしていないっていうのもあるが、そんなのはこの際どうでもいい。持ち上げて車に乗せればそれで済む。
ではどうしてか。
それは、この時間まで雪奈を起こさなかった理由にも結ばれる。
――俺だって、今起きたところなんだよ。
俺たちは二人とも絶望的に朝が弱い。
特にデートの日なんて雪奈が起きた日があったかなんて覚えてもいない。
ということはやはり、デートの日はいつも通り、今と同じく寝ていたんだな。
目覚めろよ、その時の俺とその時の記憶。
二人のデートが水に流れるのなんてこれで何回目だったか。
だって、いくら二人とも朝が弱いにしても、これは流石に弱すぎだろ。
俺が言えたことじゃないけど。
彼女はいつも静かだ。
それに、俺の前ではいつも冷たい。
何を言っても返事すらしてくれないし、今だって寝息もろくに聞こえないくらい静かに寝ている。
どうしていつも起きてくれないんだろう。
俺はこんなにも愛しているのに。
どうして寝息一つ立てずに、いつも冷たいんだ。
そっと、彼女の肌に触れてみる。腕から肩へ、そして首、顔、口元。
ほら、やっぱり冷たい。どこに触れても名前の通り雪のように冷たい。
雪のように真っ白な肌をしていて、雪のように真っ青な
口に手を当てても、鼻に手を当てても、
寝息一つ立てない――呼吸一つしない。
彼女が、雪奈が冷たくなって、もうどれくらい経っただろうか。
肌を染めていた真っ赤な液体も、すでに黒く変色している。
俺はもう一度問いかける。
「なあ、雪奈。いつになったら目覚めてくれるんだ?」
いつも冷たく冷めた彼女 御劔 深夜 @miturugi_sinya
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