第2話 異世界への一歩
その日の朝はやけに騒々しく、田舎ではない音、空気、多くの人の声そんな様々な雑音が耳を叩き、主人公 切咲 凪斗をバスでの浅い眠りから覚まさせるには十分な刺激だった。
「うぅ〜」
凪斗は寝起きが悪い方ではないが、バスの中で一夜を過ごす、という体験は生まれて初めてのことであったため少し覚醒するまでには時間がかかる。
目をこすりながら重い体を少しづつ起こしていく。
凪斗が起きて最初にした行動は携帯を確認することから始まった。
それは田舎の若者でも都会の若者でもかわらずに携帯依存症とういうわけだ。
そして携帯はアラームと共にバイブした。
思わず凪斗は手にした携帯を地に落とす、いまにも閉じそうなまぶたも強制的に開いてしまうほどの音量だった。
よほどこの男が上京に心踊ろされているかがひょっこり見える。
「うるっせ 最新のスマホに変えてから音量調節がわかんねぇんだよな」
ぶつぶつと文句を垂れながら落ちた携帯を拾う。
だがそこで異変に気づく。
まず、本来ならここはバスの中、だが携帯はなぜか土の上に落ちている。
正確には舗装された土の上だ、まるでなにかが通ることを見越して整えてあるようにみえる。
そう、凪斗がよく知っている田舎道に。
「土…?いや、まて…ここどこだ?」
凪斗は気づく。
根本の違いに。
ここはバスの中でもない、そして憧れの東京でもない。
まったくみたこともない景色が広がる異世界に紛れこんでいた。
違いは歴然だった。
見たこともない作りの建物、人々、それに魔法?のようなものをあたかも携帯を使う感覚で出している。
凪斗が寝ていたのは藁の上だった。
バスの椅子で眠っていたはずがなんの間違いだろうか藁にすげ変わっている。
全ての異常、異変が凪斗の頭の中に一変に入ってくる。
「なんなんだよ…ここ 俺は確かに東京行きのバスに乗ってたはずだ…まさか寝過ごしたせいか?バスの運転手に放り出されたか?シビアすぎだろ東京…」
当の本人はまだここが日本…いや、現実世界でないと気が付いていないらしい。
それもそのはず、田舎から東京に行くだけでもかなりの差があるにもかかわらず、まさかの異世界へ来てしまっているのだから。
「とりあえず携帯で現在地調べないとな…確か俺のアパートは杉並区だったはずだ」
凪斗は携帯の砂を払い、マップを開き始める。
「どういうことだ?ネットが繋がらない…まさか!東京では田舎の携帯は使えないのか?電波的なものがあっていないからか」
「ていうかそもそも周りの人は携帯を使っていないな…手の甲からなにか出してる…まてよ、スマホがもう時代遅れなのか?」
凪斗は頭が悪いわけではない。
だがこの男は東京に憧れているというだけで東京が具体的にどんな場所で、なにがあるのかを知らなさすぎた。
大学の受験は受験者数が多すぎたため、地方で開催されたせいで東京へは行けず仕舞い。
この前までファッションのあり方さえ見失っていたほどだ。
「人に聞いてみるしかなさそうだな…でも東京砂漠って言われるほど冷たい人間しかいないっていうし…」
重要な部分を知っていない癖、変な部分はなぜか知っている。
凪斗はそういう男だ。
なぜ東京に強い憧れを持ちながら、東京の悪評を知っているかは興味が強い証拠ではあるがやはりずれている。
もっと重要な情報はあったはずだが…
「できるだけ優しそうな人に…」
そうして凪斗があたふたしながらも話しかけられそうな人を探している間に一人の耳の長い女性が話しかけてきた。
「なにかお困りですか??よかったらお手伝いさせてください!」
「え!?」
凪斗は動揺した。
東京の人(東京ではない)が話しかけてきたこともそうだがその女性の容姿に驚く。
身長は凪斗より少し低いくらいで(凪斗は170センチ)髪の毛が真っ青に染まっていて人の手のひらほどある赤い蝶ネクタイに白いスマートなドレスをきた凪斗がこれまで見たこともない耳の長い女性だった。
俗に言う”エルフ”という種族。
凪斗は漫画こそ読むが異世界ファンタジーなんてのは読まない。
生粋の少年漫画派だ。
少年漫画の中にはエルフが登場する漫画もあるかもしれないが凪斗は読んでいない。
読んでいてもいざ、目の前にエルフがいるという事実は受け止めきれないだろう。
だが読んでいないからこそ凪斗は「東京にはこんな人もいるんだな」でこの異常事態をやり過ごす。
「あっ じゃあ聞いてもいいですか?実は◯◯県から来たんだけど東京はじめてで…。杉並区ってどこにあるかわかります??」
「え?」
「え?」
それもそうだ。ここは東京ではない。
エルフの女性は「こいつなに言ってんだ?」と心の中で思っていること間違い無し!ってほどにあっけらかんな表情で質問を質問で返す。
「ごめんなさい…わたしの聞いたことのない国名だったんで驚いてしまいました、◯◯県とはどのあたりにある国ですか??」
「いや、国っていうか国の中にある地域っていうか…」
さすがの凪斗も気づいた。
会話が成り立っていないこの違和感…
東京のひとが他の県を知らない−−−なんてことはありえないことだ。
もし、外国人であっても日本語を喋れている時点で日本についてそれなりに知っているはずだ。
そしてエルフの女性に単純かつ確実に今の状況を理解させられる質問を凪斗が投げかける。
「 すいません 改めて質問していいですか?
ここはどこですか? 」
「はい!ここはスカベルズ皇国 皇都 ベルズでございます!」
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