第5話 第二ゲームの内容

 第二ゲーム……、今度は真の王がゲームを提示する番……。果たしてどういうゲームが出されるのか……。


 真の王は自分の出した道具の前で腕を組む。そして「ふむ」とつぶやくと、ある道具一式を持ち出した。


「おい、お前たち。机を四つ四角にくっつけてもらえるかな? グループワーキングとかで良く取る形だよ。それぐらい構わないだろ?」


「……いきなりだな……」

 なんというか、この状況じゃ素直に実行する気にはなれない。


 だが、田村は特に躊躇なくパッと前に出来た。

「別に構いませんよ。さぁ、みんなでさっさと済ませましょう」


 一人率先して机を引っ張り始める。心なしか少し楽しそうにさえ見えてしまうのだから困る。

 すると、アリスもため息をつきながら近くにある机に近づいた。


 アリスに続くように藤島が参加し、三人で机四つがくっつけられる。それを確認した真の王は手に取っていたものをその机に広げ始めた。


「……これは……あれ……だよな……」

 机の上に広げられたものは見られた……と言えばウソになるかもしれないが、まず知らないことはない。


「あぁ、みんなよくご存じのものだ」

 そういうと真の王は次郎の後ろに向かっていく。次郎を拘束していた縄がほどかれたらしい。次郎は自由になった両手を不思議そうに見る。


 すると、今度は真の王が自分の仮面を取り始めた。そして露わになる亜壽香の顔。括られた髪はそのまま、ニコリと笑みを浮かべた。


「さぁ! みんなで楽しくスゴロクをしましょう!」

 そう……机の上に敷かれたシートはあのスゴロクだった。


 真の王のセリフで教室中が鎮まり返った。どう反応したらいいのか誰も分からなかったらしい。真の王……亜壽香はそんな空気を換えるように両手をパンと叩く。


「さぁさぁさぁ、みんな席について。ほら、アリスも、……ほら、田村先輩もどうぞ」

 急にアリスの背中に回り込んだかと思うとスゴロクの周りに置かれた椅子に押し込もうとする。


「ほらほら、みんなもみんなも」

 両手で手招きして、全員をスゴロクの周りに集めようとするその姿は、真の王というよりは泉亜壽香という雰囲気が非常に大きかった。


「……お前……どいう言うつもりだ?」


「どういうつもりって、スゴロクするつもりだよ。ほら、みんな座って」

 まるでさっきまでの真の王がなかったかのような感じで今の明るい雰囲気を貫き続ける。


 どちらにしても、これが次のミニゲームということには変わりないのだろう。だったら、受ける以外の選択肢はないわけで……。


「あっ、でも、圭は座らないで。プレイヤーはあたしと圭以外の四人だから」


「……うん?」


 亜壽香に言われるまま、田村、アリス、藤島、そして次郎が座らされていた。ちょうどスゴロクのシートを囲うようになっている。


「これはまた随分と面白そうなことを提案してきますね。わたしたちがプレイヤー? わたしたちがゲームを楽しんでいいのですか?」


 田村がニコニコ笑いながら、机に投げられていたサイコロやコマをあさる。亜壽香はそんな田村に向かって親指を立てる。


「はい。その通りです。先輩方四人がプレイヤーそして……あたしたちがベッター、すなわち賭け人です」


「……ベッター?」

 単純に考えれば、ベット(賭け)をする人……ということになる。


「このスゴロクは五十マスでゴール。間には一回休みや何マス進むや戻るといったシンプルなイベントマスがある感じのいたって普通のもの。サイコロは六面サイコロです。


 そして、ベッターとなるあたしと圭はプレイヤーの順位を予想するわけ。一位が誰、二位が誰……って感じで。そしてそのあたり方で勝者を決めるってわけ」


「……なるほど……そう言うことか……。言っていいなら……競馬ってところか」


 すると亜壽香は少し引いたように口を手で押さえた。

「え? もしかして、圭って競馬場いったことあるの? えぇ~、それかなりグレーじゃない?」


「……だったらこのゲームを提案するお前は完全アウトだろうが」

 ……なんか妙に調子が狂う。……目の前の真の王があまりに急に亜壽香へと変貌してしまい、どうしていいのか分からない……。


「ま、説明を続けるね。優劣はまず、順位が当たった人数が多かった方になる。一位予想西田くんと三位田予想村先輩が当たったら二ポイントって感じ。

 そして、もし、二人とも同じポイントだったら、次は当たった人の順位を合計して数値が小さい方の勝利。


 一位と三位が当たれば合計四、相手が二位と三位であれば、合計五なので勝利だし、逆に相手が一位と二位で当てたら三だから相手の勝ちになる。


 もし、それを一緒だったら……そもそも、予想がお互いまったく同じだったってことになる。それを避けるためにも、最初のベットでかぶっていたら、やり直しってことで。


 アンダースダンド?」


 ……ふむ……確かに一対一のゲームになっている。プレイヤーは結局ただスゴロクをするだけなので、プレイヤー……というよりベッターは公平だと言える……。

 だが……。


「……本当にそれだけなのか? これだと完全な運ゲーになるだろ? お前は、本当にそんなゲームを提案するつもりなのか?」


 いうと、亜壽香はニコリと笑い、さっと何枚かのカードを取り出した。それを圭に渡してくる。


「お察しの通り。これではただの運ゲー、決戦を名乗るにはいささか詰まらないから……このカードを設ける」


 見せられたカードは文字がプリントされていた。

 一枚目に書かれていた内容は『サイコロの出目をベッターの任意の数にする』。ほかにも何枚かカードが渡されていた。


「これは効果カード。ゲームのプレイ中、各カードにつき、一回だけ使用することができる。これにより、プレイヤーのゲームをベッターが動かし、自身の望む展開にするのが、普通のスゴロクとの違いだね」


 なるほどね……そういうゲームか……。

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