第15話 策の推測
「色々とやってくれたみたいですが、残念でしたね」
作戦会議に入ると、田村が真っ先にそんなことを言ってきた。
「結構まずい状況……だよね」
森も少し控えめな声で告げてくる。
だが、圭は二人に対して小さく首を横に振った。
「確かにいい状況ではないな。だが、交渉決裂は想定の範囲内だ。というより、ほぼ無理だと思っていた。無理に交渉を成立させるため、敵にこれ以上のメリットを与えてももはや無意味だしな」
そう言いながら圭は長井らと王らに視線を向けた。
「奴らの策となる条件を少しは絞り込めた。ここから、もう一度ルールと照らし合わせて奴らの策を模索するしかない」
「……絞り込めた? ……それは……、どういうこと?」
森の質問に対し、圭は指を一本立てた。
「まずは長井の策の条件。前回と同じように今回も確実に点を取りに行くことができる策であるということ。しかも、あの感じだとおそらく、一回目とさほど策は変わらないと踏んでいる。
二回連続で行える策ということ。
そして、森は一発で当てられたが、影武者に関しては一発であてに行けなかったということ。しかも、真の王に対して第一フェイズでかまをかけに行ったのに、それでその精度だということ。
話しかけが策をカモフラージュするためのフェイクかもしれないが、どちらにしても、長井にとって森の策と影武者の策には何かしらの差があるということだ。その差を見極めれば、奴の策に近づけるはず。
何とか早急に見破って対策をしないといけない」
そして二本目の指を立てた。
「あとは影武者の策の条件。おそらく、奴はまだ必勝法にかなり近い策をまだ有しているだろう。だけど、前回の一戦でその策を使用した形跡は見られなかった。普通にセオリーで挑んできただろう?
だけど、アリスと自分が接戦状態で二点取れば勝利という段階で、策を執行しない理由は割と限られてくる。何もないのに、策を実行しないメリットはまずないしな」
そこで田村が「ふむ」と言いながら顎に手を当てる。
「であるなら、考えられる理由ですか……。3点3点と同点の状態では行えない策とか……、ゲーム性が変わった第三回戦時では、まだ準備をしきれていなかったとか考えられますね……。ほかには……」
「第一フェイズ後半で長井が真の王に接近したこととか?」
ふと横からつぶやいてきた森の言葉にピクリと来た。
「……それも十分考えられるな。敵に近づかれている状態では行えない策を持っていた? それとも、話しかけられたことにより仕掛けるタイミングを見失ったか……。
アリス、いい気づきだ。このルールになった以上、何か仕掛けるなら第一フェイズ前と決めつけていたが……それは性急だったかもしれないな。もっと視野を広げて、可能性を模索しないと……」
ここで一度、アリスにスマホを貸してもらい契約内容を再確認していく。
コインを見失ったプレイヤーはそれを告白しないといけない。その後、そのセットの参加権を失う。
第二フェイズは質問タイムと指定タイムを交互に行う。
質問には嘘なく答えないといけない。質問は「Yes」「No」でこたえられるもの。
回答フェイズにて答えとなる場所は、プレイヤーが隠したと認識した場所。
プレイヤーは故意に接触してはならない。
他者にコインが渡った場合、ゲームを一からやり直す。コインを奪った人が所属するチームにマイナス一ポイント。
もしプレイヤーがコインの移動を認識すれば、その移動した先が答えとなる。ただし、第一フェイズ中に限る。
ここまで洗い出し、チラリとタイマーを見る。もうすぐ作戦タイムの十分が過ぎる。もう……時間がない……。
「……うん? これは……」
「どうかしましたか?」
「何か、案が浮かんだの?」
「あぁ……まぁ……」
だが、確信には至れていない……。そもそも、長井の策はまだ分かっていない……。いや、時間はないんだ。もし、“あれ”を利用されるのだとすれば……それの対応策ならある……。
「まずアリス」
圭はポケットから森が隠すコインとなる虎コインを差し出した。そして、あることをしてアリスの目の前にもっていく。
「まず、アリス。これを今一度しっかり見て認識しておけ。これを俺のP20に隠しておく。そして……」
圭はアリスに向かって手を伸ばした。
「“アレ”を俺に渡せ。代わりに五百円玉をお前にやる」
「……アレ……て?」
首をかしげて何を渡せばいいのか分からないでいる。森、時間もないのでさっさと言うことにする。
「むろん、コインだよ」
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