第10話 ゲーム内容の提案権
これで三勢力によるエンゲームが今ここで開催されることは決定した。だが……肝心な話ができていない。
「ところで、ゲームの内容はどうするんだ? まさか、ここで長井、お前が提案するだなんて言わないよな?」
「僕はエンゲームをこの場でする気満々で来たからね。いくらでも提案はでできるよ。君たちが咄嗟にゲーム内容が思いつけないというのなら、その分も僕が提案してあげてもいいんだよ?
特に三人でやるゲームとなれば、事前に考えてもいなかったりするんじゃない?」
「断る。ゲームの内容なら俺だっていくらでもストックあるさ」
「こちらも同じ。だとすれば、わたしかお前が、どっちが提案するかって問題か」
こちらがはっきり断ると、長井は両手を振りながら一歩後退した。流石に、この状況でゲーム内容を提案できる立場ではないとわきまえているらしい。
「だけど、三人ともに公平なゲームで頼むよ」
だが、これは大きな問題だ……、普通に考えたらお互いゲームを提案する側を譲りたくないだろう。提案する側の方が圧倒的に有利だからだ……。だが、提案を受ける側になれば、交渉のしやすさは上がる。ハンデも貰いやすい。
当然、ゲームの提案を圭だってしたい……。だが、それ以上に欲しい交渉があるなら……話は別。無駄にお互いが譲り合わないよりは……。
この状況において避けたいことはなにか……。となれば……圭自身が動くことを避けたいな……。これはあくまで練習試合、これが終わっても王との戦いは続く……。であるならば、こちらの情報を必要以上に渡すわけにはいかない。
「……王、ゲームの内容はそちらが提案しろ」
「ほう、これはまた大胆だな」
驚いた声を出す女子の王。これが本当か演技かは知らないが……食いついてくれれば十分。
「その代わり、こちらの要求。ゲームの内容は、それぞれの勢力から代表一人を出して戦わせるものにしろ。エンゲームの契約を行うのもその三人だ」
もし、これが通るなら圭側は森を代表として出す。もし、圭が出れば否応なく圭のアカウントが敵に知れ渡ることになる。ここまで隠してきたのだ。押し通したい。
アカウントがバレるということは、すなわち相手に筒抜けということ、今の状況においてそこまで距離が近くなるのはきつい……。
「といってもこの分は交渉というよりは確認だ。どうせ、お前だってそれを望むはずだ。キングダムの契約構成を見てもそうだし、わざわざ影武者を使っているのからも見て取れる。
お前は自身の情報を極力漏らさないように動いている。であるならば、これはお互いにとってメリットだ。というより、お前もそういうゲームにしようとしていたはず。どうだ? 違うか?」
圭の提案に対し、王は仮面越しに笑う。
「中途半端にリスクを負って、全員強制参加とか、それぞれのリーダーを出すようなゲームには、間違ってもしないよう釘差しをしたわけか。まさに確認か」
「それはOKだと解釈していいな? なら続いてこちらが本当の要求だが……」
「いやいや、待って欲しいね」
またそこに口を割ってきたのはやはり長井。だが、長井のツッコミは十分予想していた。
「その感じだと、君たちはそれぞれのサブを出そうとしているよね。リーダー本人が直接契約しないと、僕たちの賭けは精算されないんじゃないのかい?」
そして内容も想定通り。気づいたことは偉いと評価しておくか……。
「それに関して言えば、俺たちは俺が契約しなくても精算可能だ。
まず、王側の要求は田村の契約解除。俺たちはこの三人で共闘契約を結んでいる。すなわち集団契約だ。集団契約なら、本人解除で本人の意思のみで解除可能。
よって、契約にこの田村も混ぜておけば、精算できる。
続いて、お前のほう。王を倒すという目的の邪魔をしないということだったな。まず、俺とこのアリス、二人は解放者で、形上俺がリーダーだが、実質ここに上下関係はない。
アリスに対して、解放者の動きを阻止するよう契約を出せばそれだけで行動制限され抑止力になる。といっても、それだけでは納得できないだろう。もし、アリスが敗北したなら、俺もそのときは直接契約してやる」
といっても、裏にはまだ次郎がいるからそれだけでは止まらんがな。
「僕がそれを信用できると思っているの? 嘘をついていない証明はない、というか、いくらでも嘘を付ける立場だよね? 大体、敗北したら契約するなんて、そもそものエンゲームの根本が崩れる提案じゃないのかな?」
「嘘に関しては、ゲームする前、アリスにウソをつかずに話す契約をしてから問いただせばいい。アリスもまた解放者、アリスが知っていることは嘘つかず話してくれるさ。
後者に関しては何も言うまい。これを受け入れられないと言うのなら、このゲームを降りるまで。王が既に言ったように、選択を迫られているのはお前だ、長井敏和」
「……」
「安心しろ、約束はしっかり守ってやるよ。なんなら、アリスが敗北したなら、契約するまで帰さんとでも言えばいい。今、お前が掌握しているこの教室の出口を存分に使うといい」
ちらりと扉の前で立ち続ける側近二人に視線を送ったあと、王に視線を移し替える。
「王よ、お前は問題ないだろう。少なくとも俺の要求は影武者で全て完結すること。一人の解放に関しては知らんがな」
対してキツネの仮面を揺らす女子の王。
「……なるほど、そこまで見込んで、影武者の正体を知るという要求にしたわけか」
「過大評価をどうもありがとう」
女子の王は少し笑い肩を揺らす。すると、そのまま長井に視線を向けた。
「なら、わたしも誓うとしようか。負けた場合、潔く君と契約することを約束してやる」
こうして、王もまたコントラクトなしの約束を誓う。これで……問題ない。
「待て……その誓い……もっとしっかりとしてもらえる方法を思いついた」
だが、長井はそこで待ったをかけてきた。
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