第9話 提案の乗るのは誰なのか
田村との共闘契約を破棄する要求か……。王の察しの通り契約されている状態だから、負ければまずこの間の契約は本当に破棄されることだろう。
だけど、同時に圭にとってこれはそれほどきつい要求にはならない。
元々不必要なことを発信校外市内契約は、エンゲームの勝利契約で、ジュリエットともども結んでいる。それが破棄されないのだから、本当に対した問題ではない。
対して当の本人、田村は一歩前に出ると不敵な笑みを王に向ける。
「……王よ、それはあなたがわたしを恐れているから、という解釈でいいのですか?」
「そう思ってくれて結構。キングダムのメンバーが敵にいるのは何かと不都合。その代わり、無事契約を破棄できたら洗いざらい話してもらおう」
「それは怖いですね」
田村はそう言うと、圭のほうに向き直る。
「この要求を受けるかどうかは君次第です。ですが、受ける以上、練習試合じゃない、本気で倒しに行きますよ」
「……無論、わざと負けることはせんよ」
これはお互い、合意となるのか……。であれば……エンゲームは成立。
「ちょっと待ってくれる?」
が、そこに口を挟んでくるのは長井。指を女子生徒の王に向ける。
「その王の僕に対する要求はちょっと頂けないね」
「ほう……なにか?」
「打倒王の目的を取り下げる、そういう意味合いの要求をしてきたけど、それは実質僕に対するトドメ。この条件下において、その要求はちょっと行き過ぎだと思うんだけどな」
「別に偽物だろうが、解放者としての行動を止めるとは言っていない。今後もぜひ、キングダム以外の支配グループを解放に導いていくといい。本当に上手く意いき、信者を増やすことができたら、またキングダムに立ち向かえるチャンスが訪れるかも知れないだろう」
「もうちょっと賢いかと思っていたんだけどな……。今この場において、お互い一番の目的は置いておき、別の要求を与えようとしている。それに対しては、合わない要求だよ」
確かに……長井が言いたいことも分かる。この契約によって、下手すれば建前上大きな目的の一つを阻害されるような契約。あくまでも、自らを本物と言い張り続けることで、交渉を有利にしようとしているのか。
「そちらこそ勘違いをしている。お前たち解放者同士なら、お互い関係あるかもしれないが、今のわたしとお前との間柄にはほぼほぼ何もない。お前に対する要求などほぼない。
もし、この要求を呑まないというのならそれでも結構。わたしはこのエンゲームを降りさせてもらおう。
お前の提案にわたしが乗るんじゃない。お前がわたしの提案に乗るかどうかだ!」
仮面越しに睨みを効かせる女子の王。もう堂々と自ら動き出している。対して長井も睨みを返す。
「君が僕の提案に乗らなければ、結局そっちの偽物の解放者とも話がつかず、降り出しに戻る未来が見ているとは思わないのかい?」
「それでもいい。大きく動き始めてもいない中でリセットボタンを押すことにためらう理由はない。問題はお前だ。
お前はどうしても、この三人でエンゲームを行いたいのだろう? いや、三人でなくとも、このどちらかとは、どちらともか……戦いたいのだろう? ここでわたしの提案を呑まなければ、これ以上わたしがここで交渉する理由もない。
そちらの側近が嫌になって部屋の扉を解放するまで、気長に待つとしよう」
そう言うと、影武者を引き連れ部屋の隅っこに行く。そのまま、長井の答えを待つだけだ、と言わんばかりに椅子に座り込んだ。
しかし……これに対して長井が考え込む確率は五分五分だろう。王を倒すのも本当に目的としているかどうかで……。
「分かったよ。その要件で呑もう」
即決か!
「お前……本当にわたし……王を倒すつもりなの? それって、ただのカモフラージュが目的なんじゃない?」
そうだ、ここで即決するということは、やつにとって王を倒すことは二の次……。それよりは圭に対して目的の邪魔をさせないこと……でも……あれ? 奴の内容は打倒王の目的の邪魔を……させない……。
待て……じゃあ、長井の目的は……?
「どうやら、あの長井という人物は……負けた場合のことより、エンゲームを行って勝利することに意識を向けているみたいですね」
田村が圭の横につきそう言ってくる。
「負けるつもりなど……さらさらないと言った感じでしょうか」
「あぁ、大丈夫だよ。言ったよね、これは練習試合だって。まずは、みんなで楽しもう」
よく言う……。
ここで、話は一通りまとまったと考えたのだろう、王二人が立ち上がり、圭や長井の近くに再び寄ってきた。
「ならば、その契約でエンゲームをしようか。ちなみに、そのゲームはいつするつもりだ?」
「話の流れから見ても決まっているよね? 今だよ」
今……ここで……。
「ここで間を置けば、結局僕がいない状況とさして変わらなくなる。なにより、軽い賭けで行う練習試合の意味もなくなるよね?
今すぐこの場、即席でやるからこそ、意味が有る。そうは思わない?」
だが、もはやこの状況において、それを否定することはできない……いや、する必要はない、それは無意味。ここまで来たのならば、選択肢は……ない。
圭、王、そして長井、三人は教室の中央にて……これからエンゲームを行う。
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