第3話 ポーカー開始

 交渉が終了し、ゲーム開始ということで、ゲームに合わせて座る場所が変わる。それぞれのチームが交互に入るように、すなわち同じメンバーが対角線状で向かい合う形になる。


 順番は時計まわりで小林圭、田村零士、森太菜、仮の王。


仮の王 ● ○小林圭

森太菜 ○ ●田村零士

 こういう形で並びあった。


 まず、チップが圭たちにも渡される。


「百三十枚、確認して。こちらは百枚ちょうど」


 そう言われ、チップ枚数を数えた。問題は……ないな。


「このチップはチームで共通。これをポーカーの賭けで奪い合い、最終的にチップがすべて奪われるか、八回戦が終了するまで行う。勝敗は言うまでもないよね。

 最初は半分ずつ持っているといいよ」


 もう一度確認するように仮の王は説明しながら、ゲームの準備を進める。


 まずはディーラーポジションの決定。トランプが順番に配られ、一番ランク(トランプの数字)の高い人が最初のディーラー。


 その結果、田村のところがディーラーポジションに決まる。仮の王は用意していたらしいDEALERと書かれたプレート(ディーラーボタン)を田村の近くに置いた。


 このボタンは一戦ごとに時計回りに……すなわち次は森に移る。


「まずはブラインド。彼女が……ややこしいね……お互い共通の呼び名を決めておこうかな。まさか、本名を教えてくれる気はないだろうし」


 仮の王は人差し指を顎に当て「う~ん」と唸る。

「じゃあ、あたしのことはジュリエット、彼はロミオで」

「ロ……ロミっ!?」


 珍しく田村が戸惑いを表に出してきた。

「あら? 不服?」

「いや……構わないですよ」

 田村はそう言いつつもひきつった笑顔を見せていた。


 そして、仮の王は今度、こちらに視線を寄せる。

「君たちのことは何て呼ぼう?」


「わたしはアリス。彼がボブ。以上」

 森は清々しいくらい淡々と答えた。


「あ……そう……随分と適当ね」

 ロミジュリのあんたらには言われたかぁないがな。

 でもまあ、それに従い、仮の王をジュリエット、田村をロミオということにしておいてやろう。


「じゃあ……えっっと、続きね。まずアリスがチップ一枚。わたしが二枚。あ、ブラインドのことね」


 ディーラーの左隣の森がSB(スモールブラインド)でチップ一枚を、そしてその隣の仮の王がBB(ビッグブラインド)で倍のチップ二枚を支払う。


 SBとBBは常にボタンの左二人になる。この二人はラウンドの開始直後にこの強制ベット(ベット:チップを賭けに出す行為)をしなければならない。


「……ちなみにブラインドって?」

 森が質問すると「あぁ」と言うように仮の王が頷く。


「ま、ゲームの参加料みたいなものかな。ブラインドがあることで、ずっとゲームに降り続ける行為をしても、所持チップが減っていくでしょ」


 つまり……、テーブルにいるだけ居座って、永遠に降り続ける(フォールド)行為を避けさせるためのもの。


「次はトランプのシャッフルとカット。

 シャッフルはボタンを持つものが……ディーラーが行う。その後、カットをディーラーから見て相手チームにしてもらう。どっちでもいいよ」


 田村がトランプの束をシャッフルすると隣の森に渡してきた。

「カットって?」

「どんなやり方でも……。よくあるのは山札を二つに分けて下にあった束を上に乗せるやり方かな。手早くできるし」


 森は仮の王が言うまま、カットを行う。

 相手にカットをさせる……シャッフルのイカサマの難易度が上がるということ。少なくとも圭みたいな素人にはこのルールじゃ確実な方法は思いつけない。


「じゃ、次は手札、ホールカードを配る。

 ボタンを持つ者が一枚ずつ時計回りに配って。ひとり二枚になるように」


 田村の手によりどんどん配られる手札。全員に二枚ずつ裏側のカードが手の中に。これが……ホールカード。非公開情報のカード。


「続いてコミュニティカード。三枚を中央に表向きで出す。これは一気に出しちゃうから」


 出てきたカードはハートのジャック、ハートの10、スペードのエース。


「これは共通のカード。チームでお互い、このコミュニティカード三枚と、それぞれの手札合計四枚を合わせて、七枚で役を作る。


 注意してほしいのは七枚で作るということ。テキサスホールデムや7カードスタッドみたいに、七枚から五枚選んで役を作るわけではないから。


 すなわち、タッグ相手の二枚が非公開の状態でベットしなければならないってこと。分かった?」


 そもそもそのテキサスなんちゃらとかが知らないが、ルールは分かるのでうなずいておいた。森も同様にうなずくと説明が続けられた。

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