第7話 幼稚な返事
そして、今、圭はネイティブに押し返す手紙の内容を考えていた。
別にネイティブと文通でもしようなどというイカれたことは考えていない。ただ、とにかく一方的にやられて黙っていられない。
無論、感情的になればネイティブの思うツボだろう。だが、逆にネイティブに圭が思い通り動いていることをアピールしながら、こっちの策に引き込むことも……できる。
「……はず」
思わず、思っていることを口に出してしまった。授業中だったので、慌てて口を塞ぎ再度、手紙と向き合う。
さて、具体的にどうしたらいいか……とりあえず、第一の目標は……ネイティブから返事をもらえる内容にすることだよな。無視されたら……目的の半分以上が無意味。だったら、こっちから返さないほうがいい。
なら、煽るような文章か? それに乗るか? 乗ってくるのか?
「……くるか」
そういえば、あのネイティブに呼び出され、面談したときも、圭の突っかかりに対して、いちいち返していた。無視はしていない。
あいつは他人の心を読むのは得意かもしれないが、自分の心理を制御する力はそこまで、というわけではないのかもしれない……。ならば。
『ネイティブさん。ご丁寧にお手紙どうもありがとうございました。確かに読ませていただきましたよ。全てあなたの思惑通りにね。
だが、尾行の仕方はいくらでもある。あなたが投函箱を回収しようとする限り、あなたの尻尾を掴むのはたやすいこと。いずれ、あなたの手に渡るとわかっているのだから、いくらでも方法は思いつきます。
もちろん、あなたが俺の行動に恐れを見せて、納金、投函箱の回収を辞めるというのならば、それでもいいですよ。そうなれば、正直言って俺には手を出すすべはありませんからね。
だが、逆に言えば、あなたが回収しようとすぐ限り、そこに繋がりはある。ならば、俺はそこを必ず、手繰り寄せてやる。
あなたは確かに心理を読むことは得意なのでしょう。でも、知恵はどうですかね? ここから先は、互の知恵比べですよ。そして、バカが負ける。
Ps・手持ちがないんで全学納金はできませんが、一部は納金しておきますよ』
……我ながら、なんと幼稚な煽り文。センスねえな。
出来上がった手紙の文面を見て、項垂れる圭。自分で自分がなさけない。だが……
「おっと、ここまでか……じゃあ、ここまでだな。日直!」
授業終了のチャイム。先生が授業終了を宣言すると日直の起立礼と共に、今日の授業すべてが終了した。
「いつの間にか……放課後になっちまった……」
ないセンスをいくら絞っても、薄っぺらいものしか出てこないってわけか。これ以上、むだなことはしないほうがいいな。
さっさとこの手紙を折りたたむと、投函箱がある教室のひとつに入った。投函箱の横に付けられている封筒を取り出し、その手紙とプラス、一円玉を入れた。
それを……投函箱に入れる。
「ネイティブは……どうでる?」
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