第9話 コントラクトの影響下
次の日は当然くる。
流石に、昨日の今日で次郎と一緒に昼飯を取ることはできなかった。次郎も同じようで、特に声をかけてくることはなかった。
ゆえに、昼は一人で卵サンドを例のフライハイトでかじるだけだった。そのまま、午後の授業も終え、今日という日は終わる。
いや、まだ一日は終わっていない。むしろ、圭にとってはこれからだ。そう意気込み、今日の授業が終了し、ホームルームも終わると一人、三階にあるフリースペースの「フライハイト」に向かおうとする。
「なあ、その圭? ちょっと」
「悪いな、次郎、今忙しいんだ」
今日の最後の最後になって次郎が声をかけてきたが、今は余りにもタイミングが悪い。
「いや、でも昨日、明日なら話すって……」
……その約束は確かにした……だが……。
「悪いが今は離せない」
「な、なんで? やっぱりまだ怒って?」
「違う、契約だからだ」
圭は周りに聞こえないよう声のトーンを落とし、次郎に耳打ちする。
「今の俺にかかっている契約は、お前を許す契約の他に、キングダムの情報を探る契約、そして支配から逃れようとする契約だ。
対して、お前と今日話すというのは約束であって、コントラクトでした契約じゃない。
コントラクトの影響なのかな……、どうしても今は、お前と話す気は起きない」
「そ……そんな……、でも、俺だってキングダムの情報を探れって契約はかかってるけど、……お前と話せない感じじゃないぞ。実際こうして……」
「……おそらく、今はお前の中で、情報を探る手立てが見つかっていないんだろう。なにかしら、情報を探れる手立てを思いつけば、意識は変わってくる……変わってしまうんじゃないのか? こればっかりは知らんがな」
まだ、コントラクトの強制力がどこまでもものなのかも理解できていない。それも踏まえて、これから考えることはたくさんありそうだ。
なにしろ、”全力を注がなければ”ならないからな……。本当、自分の意識がおかしくなっている気分だ。
「……って、ことは、圭は情報の手立てが見つかったのか!?」
「……大したことじゃないがな」
「っ! だったら、それ、俺にも教えてくれよ!」
突如、血相を変えるように次郎が詰め寄ってくる。
やはり、次郎も契約下にあるわけだな……、気が付けば情報を集める方法を必死に探ろうと動き出してくる。圭と話をするよりも。
「断る」
「……なんで?」
「お前に教える義理はないだろう?」
「……」
次郎は黙り込んで、俯いた。そんな様子に圭は対して感情が湧いてこない。
「確かに契約でお前のことは許した。でも、チャラになっただけ。俺の中にも妙な突っかかりは残っているし、かつてお前を嫌悪していたことも覚えている。
これが許すという大雑把な単語で行った契約内容によるものか、コントラクトの強制力の限界なのかは知らない。でも……どちらにしても、今の俺にっての優先順位は……決まっているらしい」
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