第10話 情報収集
話し合いを求めてくる次郎を言いくるめると、さっさと教室を出て第二教室等へと向かった。
放課後のフライハイト、やはり予想通り人の数は少なかった。昼間はあんなに人でにぎわっていたのに今の時間は数人、しかも、どれもかれも一人でいるやつらばかり。いわゆるボッチ系統の生徒なのかもしれない。
……って、今は自分もボッチ系統の一員か。
圭はそんな人たちがいる中、お気に入りの席、南西の端にある席を陣取った。いつも通り中庭、セカンドパティオが見下ろせる場所である。
中庭はフライハイトと違いそれなりの生徒がワイワイとしていた。
しかし、今圭が目を向けたいのはそこではなかった。
むしろ、特別棟の三階と四階だ。特別棟と垂直になっているこのフライハイトからだと、特別棟の教室がしっかりと見られる。この場所なら見渡すことも可能。
特別棟の三、四階はとくに空き教室が多い。ネイティブが利用したように、教室棟とは違うから生徒の出入りも少ないから、集合場所にはもってこい。
もし、キングダムもネイティブのように時間場所をバラバラに設定するなら、少なくとも数回、この場所を利用するだろう。
圭は鞄から本を取り出した。あくまでもここで時間をつぶしているというフリを醸し出しながら、特別棟を観察する。むろん、ここにいるやつらがキングダムの関係者ではないという保証はどこにもないのだから。
それから張り続けること、一日、二日が過ぎ、三日目。
いつも通り本に集中するフリをして時々、特別棟のほうを見る。するとチラホラと人の影がある教室がひとつあった。
もう少し観察を続けるとさらに影がうろうろ動く。
こいつはキングダムの集会か?
実際、この三日間で圭の周りでもキングダムを探し回っている連中がいるという噂を耳に入れていた。情報が確実に蔓延しだしているのは確かだ。
圭は本を閉じると鞄に入れゆっくりと立ち上がり、現場の近くに向かった。
集まっていた場所は四階の東側一番前。すなわち手前だ。さてどうするか……一番はキングダムの一員のふりをして進むことだろう。
だが、それには難点もある。ネイティブの集合の時、新入りに対して視線を向けられたことだ。
もし、キングダムも似たような形式を利用していた場合、圭は注目を浴びてしまうことになる。それは避けたいことだ。
そんな考えが頭を巡り、特別棟につながる廊下の前で足を止めてしまった。しかし、そんな中、向こうから男子がふたりやってきた。そのまま、手前にあるトイレに彼らは入り込む。
しめた、こいつは……?
足音を立てないよう注意をしながらトイレのドアの前に立つ。そしてこっそり耳を当てた。
「しっかし、ネイティブだとかキングダムとか、もうどうでもいいよ」
「でも、キングダムに逆らったら……と言うより逆らうこともできないからな」
ビンゴ! 二人の会話がドアから漏れて圭の耳に入る。会話から察するにキングダムの人たちで間違いはない。今一度周りを確かめ、ドアの前で聞き耳を立てる。いつだれがドアの前を通り過ぎてもすぐトイレに入り込める準備をしながら。
「で、キングダムについて外では一切話すなと」
「まあ、今は二人しかいないからな。実際喋れている。だめなら契約でしゃべられねえよ」
なるほど、コントラクトで他人がいるところでキングダムの話をできないようにしたな。だが、逆に言えばキングダムの話を持ちかけて完璧に口を閉ざす者はキングダムである可能性が高くなると見て間違いない。
「で、どうすりゃいいと思う?」
「逆にネイティブの情報を聞き出せってやつだよな?」
「ああ……、他のキングダムの連中はどうするんだろ?」
「さあな? ってか、お前。ネイティブに知り合いいないのか?」
「いる訳ねえだろ、だったらさっさとお前に言ってるよ」
なるほど……ネイティブとキングダム。お互いに探り合っている状態らしいな。
ターゲットにバレないよう注意をはらいながら思考の海を泳いでいた。具体的にどうすれば……有益なキングダムの情報を得ることができるだろうかを……。
そんな思考をしている時だった。
「グループ:キングダムに何か用でも?」
唐突に声をかけられた。
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