第11話 ゲームスタート

 お互い契約内容に対し成立を同意した。これ以上探りを入れても分からない。あとはゲームを進めていく中でネイティブの企みを暴くしかない。


「じゃあ、成立したことだし始めるか……まずジョーカーだ、ほら」


 そう言ってネイティブからジョーカーを投げ渡された。

 それに対し一応念のため仕掛けがないか触りながら裏も含めて確かめる。続いてジョーカー以外のカードも四枚渡された。問題なく、ジョーカー1枚とそれ以外四枚だ。見た感じイカサマもない。


「じゃあ、さっさとジョーカーの位置を決めて手札に収めろ」


 圭はトランプ五枚を手に取り通常ババ抜きをするよう右手に扇状で並べた。今ジョーカーは右端に存在している。


「どう並べてもいい。ただし、ここで決めたら後から変えられないことは念頭に入れろよ。そうだなぁ……俺はまず、俺から見て左側からジョーカーかどうか探りを入れていこうかな」


 思わずドキリとした。ネイティブはそう言って圭から見て右側、ジョーカーがある位置をいきなり指さしたのだ。

 でも、それはすぐ冷静になり気づく。最初にジョーカーを手札にするところを見ているのだから分かっていて当然。慌てるな……そう自分に言い聞かす。


「ところでお前、部活は何かやってるのか?」


 何を突然、思考を紛らわすつもりか?


「何もやっていません。帰宅部ですよ」


「スポーツをやったことは?」

「特に……ないです」

「ふ~ん、好きな色は?」

「……黒」


 そういいながらジョーカーの位置を決めた。机の下に手札を隠し、ネイティブに見えないよう念入りに位置を決める。右から……四番目。あまりなにか作戦を練るでもなく、直感的でこの位置になった……つもりだ。


 手札を上にあげた。それと同時にしっかりとしたポーカーフェイスを決める。視線は……ネイティブの頭より少し上。手札は下の方、とにかく簡単に悟られないような形を決める。


「それでいいのか? ジョーカーは……その位置で問題ないんだな?」

「はい、大丈夫です」


「もう、変えることはできないぞ」

「はい」


 そこでジョーカーをもう一度チラ見するなどというヘマは流石にしない。視線は一切変えず、ただただ返事をする。


「さて、ジョーカーはどの位置にあるんだ? 左から……一番目か?」


 始まった。ひと呼吸を起きながらネイティブの言葉を聞き流す。ゲーム勝利に直接関わるこの質問に答える義務は一切ない。

 ただ、ネイティブは質問の答えを聞く素振りもなく、圭が握る手札の一番右に人差し指を当ててくる。奴から見ての左側だ。


 ネイティブの視線はヘルメットで相変わらず分からない。だが、恐らく圭の顔を見ている……のだろうか?

 あくまでも視線は分からないのだ。最初に懸念していたほかの仕掛けに視線を向けている可能性の十分ある。やつの目は……どこにある?


 圭は思い切って顔をネイティブのヘルメットに向けた。逃げてばかりではダメだ。こっちからも攻める姿勢を見せないと。だが、ネイティブは動じず続けた。


「なるほど……じゃあ、2番目……三番目は? ……四番目……」


 心の奥では反応せざるを得なかった。ジョーカーのある位置。でも、平常心をしっかり保ちつつ、ネイティブの顔の動きに注目し続ける。

 そんな中、ネイティブの人差し指はジョーカーを通り越して右から五つ目に移動した。


「五番目は……どうだ?」


 しっかし、こいつは何を考えているんだ? こんな不確定な読み合いだけで本当に勝負するつもりなのか? 

 あのヘルメットの向こうにある視線はどこに向いている? もしかしたら下を向いているのかも……机の下に何かしらの仕掛けを仕込んでいたとしたら……顔だけ前を向いて相手を見ているフリして仕込んだ仕掛けに……。


「なるほど、……よく分かった。ならまず、これはジョーカーじゃないな」


 ネイティブの視線や企みを思考している中、ネイティブはなんの躊躇もなく手を圭の右端にあるカードに手を伸ばし、引き抜いた。無論、ジョーカーではない。


「あと……これも問題ないだろう」


 続いて間髪入れず次の右端も。気がついたときには一番目と二番目が容赦なくジョーカーではないと確定され引かれていた。


 思わず目が一瞬点になってしまう。続いて自分の手札に視線を落とした。


 残り三枚のカード、最初は四番目にあったジョーカーも真ん中になってしまった。その間にも視線こそどこにあるのか分からないが、引いたカードを確かめるネイティブ。


「ふっ、ほら、問題なかったな」


 そう言ってネイティブは引いた二枚のカードをこれ見よがしに目の前でひらひらとさせてから机に放り投げた。

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