第8話 ネイティブの狙いは?

 思考をするにしても、やはり情報は必要だ。

 そうたどり着いた圭は、まずこの質問を真っ先にぶつけた。


「ゲームの内容は?」


「う~ん、そうだな……トランプゲームでどうだ? それもお前に特別有利なゲームにしてやろう。何しろ、お前は初心者だからな?」


 ネイティブはそういうと鞄からトランプを取り出した。


 やけに余裕だな……有利なゲーム? 

 違うだろう、おそらく見せかけで圭を言いくるめて実際は不利なゲームに持ち込ませようとするつもりじゃないのか?


 でなければ、そんな条件をわざわざ言って、提示するか? そのセリフからはまるで裏しか感じられない。いや、裏がないわけがない……。


「トランプにイカサマや仕掛けはない。好きに確認しろ」


 そうネイティブに言われ、机に投げ出されたトランプケースを手に取る。


 中からカードを取り出し、カードの表裏のデザイン、肌触りを確認してみたが確かにイカサマをされているようには思えない。

 ま、ここでイカサマがばれるような仕掛けがあったら、こんなことはしないか。


 だが……「イカサマはしていない。確認しろ」……この状況でこんな言葉を述べること自体が……「イカサマをしています、お前には分からない方法で」と言っているようなものじゃないのか?


 少なくとも今の圭には気づくのが難しいイカサマを仕込んでいる可能性は十分ある。

 大体、トランプを使ったゲームと言う以外、詳しいことはまだ知らない。まず、そこから。


「……トランプゲームと言っても……具体的な内容は?」


「一方的ババ抜き……とでも名付けてみようかな?」

「一方的?」


「ジョーカーを含めたカード五枚がお前の手札だ。そこから俺は一枚ずつ引いていく。ただ、それだけだ。

 勝敗も単純、俺がジョーカーを引けばお前の勝ち。最後の一枚ジョーカー以外すべてを引けば、俺の勝ち。


 どうだ? お前にとってこれでもかってほどに有利だろう?」


 ……有利? 有利も有利……明らかに有利すぎる。単純計算、五分の四の確率で圭の勝ち。もちろん、ネイティブの勝利確率は五分の一。


 絶望的ではない、むろん可能性としてはあり得る確率かもしれない。でも……それでも確率が偏りすぎている。

 三枚で勝負するとかならまだしも……これは……。


 確実に何かを仕込んでいる。間違いなくイカサマをするつもりだ。絶対に勝てる方法を持っている。フェアどころではなくこちらに有利すぎる条件を出すのだから、していて当然。


 だが、イカサマはどこでしている? 後ろや横にカメラを仕込んだか? それとも教室に誰かが隠れて、ネイティブに指示を送るのか? それともやはり、このトランプに仕掛け?


「で、どうだ? そのトランプに仕掛けやイカサマがないことは確認したか?」


 ネイティブが手を伸ばしてきた。トランプを返せというしぐさだ。残念ながらこのトランプにあるイカサマは分からない。イカサマはないとして返すしか……。


 いや、待てよ……なぜ……わざわざ確認する必要がある? これはエンゲーム、契約を利用したゲーム……なら……鎌をかけるには十分な材料があるじゃないか。


「わざわざ俺がトランプに仕掛けがあるかなど、確認するまでもないんじゃないですか?」

「どういうことだ?」

「それは……あっ」

 ここまで言って圭は今一度目を閉じだ。


 発言することに躊躇してしまったのだ。これを言えば……ある意味、自分にとって最も認めたくないことを認めた前提での話になる。


 だが……、この状況……相手の仕掛けが分からない以上、少しでも勝つ確率を上げるためには……。


「コントラクトで契約すればいい。イカサマをしないという契約を」

 これが……今の圭が考えられる、最善策だ。

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