第5話 呼び出し

 今日の授業も終わり放課後となった。


「なあ、圭。悪いが俺は用事有るんで。泉でも連れて二人で帰れよ」

「ああ、余計なお世話だが分かったよ」


 そう応じるより先に次郎は廊下を走り去っていく。気が付けば、パティオを突き抜けていく次郎の姿が二階の窓から見えた。


「やっぱり丸見えだな」


 なんて昼休み話していたことを思い出しながら、肩からずり落ちかけた鞄を再度持ち上げる。そのまま、階段を降りながらあることを考えていた。


 まだスマホに変えたっていうことをほとんどの知り合いに話してない。今までガラケーだからと言って連絡先の交換すらほとんどしていなった。

 逆に言えばその理由もあってそこまで仲がいい友だちが多いというわけでもなかったのかもしれない。


 よくよく考えれば友だちがほとんどいないからスマホで連絡先交換する相手もあまりいないのかも。……いや、そうじゃないな。


 むしろ、スマホを手に入れたんだから、これを機会にクラスメイトと連絡先を交換していくべきじゃないのか?


 だが、そんなことを考えているとき、スマホがピロンと音を立てた。どうやらアプリのコントラクトからお知らせらしい。「チャットが来ました」だと。


 コントラクトを立ち上げる。確かにマイページからチャットが届いていた。と言うか、そもそもこのアプリにチャット機能があること自体初めて知った。


 相手の名前は……『ネイティブatp』。

「ネイティブ!?」


内容は……?

『特別棟三階、奥から二つ目の教室で待つ』


 ……どういうこっちゃ。無視してやろうか。

 なんて思ったが、直後に次郎からLIONが届いた。


『圭、ネイティブatpって人からチャット来たろ? 紹介してやるよ』


 どうやら、本当らしい。まあ、だったら無視するのは失礼だろう。そう思い、特別棟への階段に足をかけた。


 奥から二つ目の教室……教室……。空き教室か……。教室内は電気もつけられていない。まあ、別にまったく暗くはないのだからそれでも問題はないのか。


 ちょっと不気味な感じがしたが意を決しドアをノクした。それとほとんど同時にスライドドアがガラリと開けられる。


 目の前にいたのは男子。青のサンダルから三年生だというのは分かった

 だが妙なことがある。妙すぎる。

 なんとその男はヘルメットをかぶっていたのだ。


 それもバイクに乗るとき使うフルフェイスのヘルメット。


 前面が真っ黒で相手の顔が全く見えない。昼にTシャツ短パンのヒーローマスクを変質者と言っていたがそんなの生易しい。

 学校の制服を着て教室内で顔が見えないヘルメットをかぶる男。


 その様子は一言で言える……そう、異様だ。


「小林圭だな? 入れよ」


 少しぶっきらぼうに男はそういうと教室内に親指を向けた。


 最初それに抵抗しようと無言で相手に探りを入れてみた。だが、いくら待っても帰ることができる雰囲気にはならなさそうだった。

 それどころか、あまり逆らったりしたら何をされるか分からない。この状況だと顔も分からない以上、先生に訴えることもできないだろう。


 恐怖が入り交じる中、頭を下げ、ゆっくり教室に体を入れ込んだ。

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