11\11

天神シズク

11人の戦士

 ここに11人の戦士がいる。


 そしてここから少し離れた場所にも11人の戦士がいる。


 ――旧ヴラド王国


 今この地では、各国の精鋭部隊による代理戦争が行われていた。


 《旧ヴラド王国》は、ある日突然すべての国民が消え去り、自然消滅した国だ。原因は不明で、そのことから各国から『まわしき大地』という蔑称べっしょうで呼ばれ、近寄る者はいなかった。

 ここに残っているのは、大陸で2番目の大きさを誇る《クォンローザ王国》の11人、平和主義をうたう《グラスホープ公国》の11人、そしてその他の精鋭部隊の亡骸なきがら


叡光えいこう公文書こうぶんしょ


 なんの変哲もないこの1枚の紙だが、ここに書かれたことは必ず実現する力を持つ。

 まぁ、無理なことは無理だったりするんだが。


「生命を創造する力を得る」

「言葉1つで絶命させる力を得る」

「無限に金が湧き出る金庫が欲しい」


 こんなことを願う馬鹿がいたらしいが、無駄だった。


 この〈叡光の公文書〉にはこう書かれている。


「この戦争に勝利した国は絶対的な権力を持つ」


 その下には戦争に参加する国の国王の名前が記されている。つまり、ここに記された国王の支配する国に対してこの効力を発揮されるのだ。大陸全土を巻き込んだこの戦争は、世界の行く末を決める戦いと言っても過言ではない。


 決められた日付までに《旧ヴラド王国》に兵を配置。戦争開始以降は外部からの干渉は一切受けられない状態になる。これも〈叡光の公文書〉の力の1つである。


 戦闘に参加した戦士は、戦闘技術に長けているのは言うまでもない。残った22人は他の戦士よりも圧倒的に優れているモノがあった。


 どんな手段を使ってでも相手を殺し、生き抜くこと。


 国の為を思って戦う者は少なかった。


 戦闘狂せんとうきょう


 彼らをそう呼ぶ人も多くいた。


 11人の部隊だが、その実態は違う。個人が敵を抹殺まっさつするために行動しているだけだ。自分を生かし、敵を殺すことができるのであれば、同じ部隊の人間も利用する。


 精鋭達との決戦は直ぐに始まった。達人同士の戦いは、意外にも正々堂々としたものだった。レオナルドは2人を相手取ると、一瞬のうちに斬り殺した。別の場所ではザンヴァーニとリュウが1人ずつ敵を殺していた。

 《クォンローザ王国》の優勢に見えたが、逆に5人を失っていた。敵には『殲滅せんめつ』の2つ名を持つヴォルケンバーンがいたのだ。


 あっという間に残りは3対1になった。ザンヴァーニは自分を犠牲にし、ヴォルケンバーンと共に死んだ。


 残った戦士の1人が勝鬨かちどきを上げた。


 次の瞬間、それは断末魔だんまつまへと変わった。


 最後に残った1人は、入れ替わっていた。

 誰も知らない、謎の青年だった。


「俺はヴラドの生き残りだ。今日から俺が大陸を支配する」


 謎の青年が絶対的権力を得た。


 そして、狂王きょうおうが誕生した。

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11\11 天神シズク @shizuku_amagami

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