第5話
「…………」
興醒めしたのか、冷めた目で螭子を見下ろす天梨。よもや9時から始めるつもりだったゲームが、9時前に終わるとは思ってもいなかったのである。
「あなたのせいで、結夢ちゃんは死んだ」
耳元まで口を持っていき囁くと、一瞬だが螭子の肩が震えた。
「責任を感じてるの?ふふ、馬鹿なトカゲね。結夢ちゃんが貴女に期待してると思ってたの?だとすれば相当おめでたい頭よ」
散々な罵倒。汚い言葉の羅列。
そんなものすら、今の螭子の心の芯を折るには十分過ぎる打撃であった。
膝を付いたまま、螭子は立ち上がる気力すら失ってしまった。
「……うーん、つまんない。なんで皆こんなに弱いの?たかが猫又だよ?私」
「……へぇ、そうだったんだ」
煙の中ゆらりと立ち上がる人影。
制服に付いたホコリを払い、プリーツを軽く
「……まさか、私が何の妖怪かを知りたくて倒されたフリをしてた訳?」
「半分正解よ天梨さん。
「その呼び方……お前何者だい?」
「さあ?」
明らかに見た目は結夢だったが、どうも結夢とは違う何かの気配を感じた天梨。人に化けた今は無いはずの背中の毛が逆立つ。
「【前の時代】を知ってる、としか言えないねぇ?死人とまでは言わないが、今は死人と同じように口無しだからね」
結夢のハシバミ色の双眸が、いつの間にか右眼だけアンバーに変色していた。虹彩の色彩は銀色になり、まるで結夢が人間ではない何かの様に、天梨は感じていたのだった。
「これ以上結夢に手出しをすれば、この私が黙っちゃいないよ。件の小僧とは違って、私の予言は私に何の害もなく命を奪える。
覚えておくんだね、牝猫の砂利ガキ」
私はどこからでも、お前さんを**せる。
なんなら今試してみるかい?
「……まさか。死ぬ勇気なんて無いね。生憎私は長生きしたい方だ」
天梨は学校中に蔓延した瘴気を払い、生徒・先生にかけた呪縛も解いた。
「……結夢ちゃんに伝えといてくれる?
そろそろ貴女も、真実を知る頃合いだって」
「ようやく勘づいたのかい、お前さんのご主人にも宜しく伝えときな。
【ご隠居ババアが重い腰上げて暴れる】ってね、ハッハッハッハッ!!!!」
笑い声と共に、結夢の中にいた誰かは消えてしまった。そしてそれを見届けて、天梨も何処かへ姿を消してしまった。
この騒動で第二高校は臨時休校を余儀なくされてしまった。
廊下及び校内の修繕、瘴気を吸った生徒・教師達の療養等で二ヵ月程の長期休暇である。
そして結夢は何の怪我も無かった為に、この休みを利用してある計画を思案し、実行に移そうと思い立ったのだった……。
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