第10話

気が付けば肋骨事件は息を潜めていた。

湊はテレビを見ながら、結夢に電話で呟いている。


『あの事件、一体最後どーなったんだろ』

「なんでも犯人、新橋で捕まったらしいよ」

『なぁんか釈然としないなぁ。捕まえたのは昏先さんだったっけ?』

「そうだけど……なんで?」

『いやぁ私が捕まりたい!捕まえられたら耳元でぇ、「お前を離さない」って言われて!

きゃぁぁぁぁ!!ヤバいはかどる!!』

「何勝手に捗らせてんのド変態。それより良いの?今探偵事務所に来てるよ?昏先さん」

『行く!3分だけ待ってて!!』


ひどい興奮のしようである。


「おまっとさん結夢!!愛しの昏先さんは何処におられる!?」

「今湊が来るって言ったら出てった」

「まさか迎えに来ようと!?私ったらなんてせっかちなんだろう!!」


違うと思うが……まぁ言わぬが仏だろう。

結夢は湊を思ってあえて言わない事にした。


その頃外へ出た昏先。

その前に立ちはだかる、一人の少女。

ダフついた格好をした、背の小さい彼女は昏先を見てニコニコしていた。


「えへへ……脱獄して会いに来たよ」

「…………猩野ォォッッ!!」


昏先は激昴して叫ぶ。

事件が終わって、すぐまた事件。

昏先の仕事は終わりそうも無かった。




『……どうやら地獄の蓋が緩んだ様だが』

『申し訳ございません。あのガキ……猩野がまた脱獄致しまして』

『牛頭と馬頭は何をしておった?』

『誤って針山に転落し、今は療養中でございます。代わりの看守として、陰摩羅鬼などの妖魔をつかせておいたのですが……』

『クビだ。役立たずは地獄から追い出せ。

……飢者髑髏の方はどうした?』

『それが……本体が見つからないのです。影の方は日本で逮捕された様ですが……』

『日本、か……。あそこには奴がいたな』

『ええ。今も潜伏してございます』

『奴へ連絡を取れ。至急任務を遂行せよ、とな』

『仰せのままに、王』


ひざまづいていた美青年は立ち上がり姿を消した。

王と呼ばれた美青年の方は一人、水晶に目を凝らす。

その中には、何故かうずくまったまま眠る結夢の姿があるのだった……。


「もうすぐ、約束の時だ……」

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