第10章 A定食とB定食

第28話 Fランク冒険者の日常㉘

「いらっしゃいませー、ご注文は何にしますか?」

「A」

「俺はBで」

「A定食」

「A、2つのB、1つです」

「おうよ」

 店の奥から聞こえる店主の返事を聞き、次のテーブルへ注文を取りに行く。お店を開けてから雪崩れ込むように人が入り、あっという間に満席となってしまった。


「お待ちどおさま」

「やっぱり、がっつ食うならAだよな」

「腹減ったわ」

「よし、食うか」


 昼限定の臨時依頼となるが、依頼を出すだけあってかなり忙しい。20人くらい入れる店舗であるが、客足は途絶えない。外に出している看板にも、店のメニュー表と同じA定食とB定食しか記載されていない。A定食が肉系で、B定食が魚系である。2個しかないメニューで、ここまで盛況している定食屋さんはここくらいだろう。

 もちろん、安く美味しい定食が食べれるということもあるが、この回転率を維持しているのが、お店に大きく書いているアレだろう。

「食ったら即出ろ!!って、斬新過ぎるな。でも、ここに食べに来ている人は、どの人を見ても美味しく、そして楽しく食べているからな。しかも、みんな律義に即出るっていうことを守っているし」

「おい、できたぞ」

「はい、今行きます」

 昼は始まったばかりなので、長い戦いになりそうだ。ただ、仕事後に賄いが出るって言っていたので、すごく楽しみだ。


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