第27話 Fランク冒険者の日常㉗

「こんにちは」

「また来てくれたのね」

「はい、庭の手入れ手伝いますね」

「ありがとう」


「ちょっと疲れたでしょ?休憩にしましょ」

 ずっとしゃがんで作業をしていたので、立ち上がり体を伸ばす。入れたての紅茶と甘いお菓子の香りがする。

「甘いものは大丈夫よね?」

「はい」

 私は入れたての紅茶を一口飲む。

「美味しい」

 自然と声が出た。ほんのり甘さが、疲れた体に染み渡る。

「良かったわ」

「いつも思いますけど、この庭すごく綺麗に手入れされていますよね」

「私にはこれくらいしかすることがないから」

 そう言って、プラチナブロンドの髪の毛をかきあげて紅茶へ口を付けた。綺麗な人である。貴婦人という言葉がとても似合う人だ。何度か依頼を受けて、庭の手入れの手伝いをしている。屋敷に住んでいるということはきっとすごい人なんだろうな。

「どうしたの?」

「いえいえ、お菓子もおいしいなって思って」

「ありがとう、私が焼いたのよ」

「そうなんですか。すごく美味しいので何所に売っているか聞こうと思ったんですが、ここでしか食べれないんですね」

「あら、お上手ね」

「本当に美味しいですよ。持って帰って食べたいくらいです」

「じゃあ、帰りに包んであげるわ」

 日差しが当たり表情までは見えないが、彼女は少し嬉しそうにして紅茶に口を付けたように見えた。

「ありがとうございます。さぁ、続きを頑張るかな」


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