第16話 Fランク冒険者の日常⑯

 高いところから見る空はとても鮮やかで綺麗だろう。地平線の彼方まで見ることはできないが、町の風景がそれなりに見えるだけで、心が洗われる気持ちになると思う。雨さえ降っていなければ。いや、雨に当たっている時点で、ある意味では洗われていると言えるだろう。そう考えるだけと、さらに雨が冷たく感じたのは気のせいだと信じたい。

 屋根の修繕ができるFランク冒険者はあまりいない。屋根の修繕をギルドボードに依頼する依頼人もあまりいないが、それを見て屋根の修繕にくる冒険者もあまりいないと思う。きっと、雨漏りして大変だろうなと考えていたら、自然とギルドボードの依頼書を掴んでいた。


 雨に強い防具なんて持っているわけでもなく、雨を防ぐための魔法が使えるわけではない私は、雨に濡れながら淡々と屋根の修繕をしていた。


 屋根の修理が終わると依頼人がタオルと白湯を用意してくれていた。とても体が温まる。依頼人は何度も何度もお礼を言って頭を下げていた。私は大丈夫ですよっと軽く声を掛けて、冒険者ギルドへ報告に向かった。少しだけ心までも温まった気がした。

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