第3話 Fランク冒険者の日常③

 近くにいた回復魔法を使える冒険者が、サービスで回復魔法を掛けてくれたので三分で起き上がる事ができた。


 駆け寄ってきてくれたエリエールさんは私を心配して声を掛けてくれている。まだ、若干痛みは残っているが会話をするには支障がない。


 エリエールさんに心配してもらえるなんて今日は幸せな一日だ。だが、ネピアの怒りはまだ治まっていないようで、拳を握りながらこちらを睨んでいた。ここは鉄板のいつもの方法でご機嫌を取るしかないと思いネピアに声を掛けた。


「ネピア、今晩予定あいてる?いつものお店で飯でも食べに行こう」


 彼女の拳がゆっくり開かれる。決して掌底で止めを刺そうとしている訳ではないと思いたい。


「私も忙しい身だけど、ご飯に誘ってくれるなら行ってあげなくもないかな」


 私をちらちら見ながら、少しもじもじした仕草をしているが嫌がっている訳ではないだろう。


「じゃあ、仕事終わりのいつもと同じ時間くらいでいいよね?」


 ネピアはまじでちょろい。飯で釣られるなんてちょろ過ぎてちょっと心配になるが、これでも元Bランクの冒険者だ。たぶん大丈夫だろう。


 私は思考を切り替えて、怪しくないようにさりげなくエリエールさんもご飯に誘ってみる。


「用事がなければ、エリエールさんも一緒に来てくださいね」

「はい」


 エリエールさんからOKを貰ったので、私は小さくガッツポーズをした。今晩のご飯が楽しみでしょうがない。


 周りの冒険者から罵倒や冷たい眼差しが飛んでくる。私はエリエールさんに見られないように冒険者へ向けてドヤ顔を見せる。


 冒険者の温度感が少し上がった気がした。ネピアが一人で盛り上がっていたが、声を掛ける時間などない。ちょっと調子に乗り過ぎたかもしれないと思い、私は冒険者ギルドを急いで出た。

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