第23話 旅行、夜

ログハウスに戻り、テレビを見ながら雑談する。

店:「地震速報の音が耳から離れない」

僕・彼・店彼:「(黙って頷く)」

僕:「わざと不快に感じる音流してるから質が悪い」

店彼:「絶対あの音トラウマになるよね」

店:「もうなってる」

僕:「癒してほしいってさ」

店彼:「はいはい、そのうちね」

店:「やーだ、すぐがいい」


普段はクールなこの子がこんな顔をするのはこのメンツの他数人のみ。

みんな知ったら驚くだろうなぁと思いつつ、こんなに直球で言えるのが羨ましかったりする。なんともまぁ。。。


店:「と・こ・ろ・で」

僕:「ん?」

店:「露天風呂、行かないの?」

僕・彼「へ?」

店:「行かないなら私たち、先行くけど」

僕:「あーどうぞどうぞ」

店:「(あんた、さっさと進展させなさいよ)」

僕に耳打ちしながら去っていく二人。


図らずしも?僕と彼女二人だけの空間になる。

僕:「そういえば、ちゃんと二人っきりって久しぶりだね」

彼:「そ、そうだね」

僕:「仕事、片付いた?」

彼:「ん、大方ね」

僕:「熱心だよね。尊敬する」

内心、こんな時までパソコンに向かわなくても、という言葉を堪えている。

彼:「んー、ファンは大事だから」

僕:「あ、確かに反応が返ってきたら嬉しい、かも」

彼:「ほらね。だからそういうこと」


‐理解はするけど納得はできない‐


彼女と付き合ってまだ1か月くらい。

この先同じ言葉を何度喉の奥に溜めることになるのだろう。

そんな途方もないことが頭に浮かぶ。


まともなお付き合い、という表現をするならば、

今まで人生の中で皆無だった。

彼女の過去は知らない。交際は初めて、と本人は言っていた。

お互い(おそらく、ほぼ)初めての経験。


僕としては、彼女の喜ぶ顔が見たかったのだけれど、

とは言え、やはり二人っきりの時くらいはお互い仕事の事は忘れて、

羽を伸ばせるようになりたかった。そういう場所で、存在でありたかった。

傲慢だと思う。でもそのくらい良いじゃないか。恋人なのだから。

僕は早くも、勝手に壁にぶち当たっていた。


そんなこんなで約1時間、特に何もないまま二人っきりの時間は終わった。

店:「上がったよ~」

僕:「長くない?」

店:「こういう時くらいゆっくりさせてよ(笑)」

僕:「あー、それもそうだ」

店彼:「次お二人さん、入ってきなよ」

僕・彼「えっっっ。。。」


まだ夜は終わらないようだ

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