第20話 勘違い

あの日から僕らの仲は一気に縮まった‐と思うくらいであった‐


初めて会った日に話した事

ライブに来るたびに声援を送ってくれた事

初めて食事をした時の仕草

ファミレスでの出来事

ライブの時の立ち居振る舞い


どんどん出てくる話は、すべて僕の「優しさ」だという。

え?そんなことまで?と思ったが、黙って頷きながら聞いていた。


彼:「あと。。。あなたのライブがあった日」

僕:「ん?」

彼:「あの子の事、車に乗せてたでしょ?」


忘れもしない、僕らのバンドの初ライブの日。

終演後、彼女一同にサヨナラをした後、バンドメンバーとともに車に乗せていたのは彼女ではなく、「もう一人のあの子」であったのだ。


僕:「いや、あれはたまたま同じ方向で」

彼:「嘘だ、気があったくせに」

僕:「もし仮にあの子に気があったとしたら、今こうなってないでしょ」

彼:「あ。。。で、でも悔しかったんだから」

僕:「え?何?ヤキモチ妬いてるの?嬉しいなぁ(ニコニコ)」


彼:「そ、そんなわけないでしょ。今は私の。。。なんだから」

僕:「うん、あの時はごめんね。あのさ、好きだよ。今更だけど」

彼:「やめてくれない急に。。。私も好きだよ」

僕:「よし、これからは毎回会うたびに言うね。好きだって」

彼:「やめて。ホント恥ずかしい」


誤魔化したつもりはない。これが本音。

とは言え、ラッキーエロを期待していたのはここだけの話。

彼女の前ではさすがにそんな事、あの時は言えなかったな。

いや、一生言えないけど。そんな具合に、彼女の誤解は少しだけ解けましたとさ。


付き合いたての頃の雰囲気より、お互い慣れてきて、干渉しなくて、

でも絶対的に信頼している。そういう間柄が良かったな。と思ってみたり。

ねぇ、そういう関係のまま過ごせたら僕らは今でも一緒だったかな。

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