第6話 疑問

その日の営業が終わり、店長、彼女、僕の3人が残った店。

少し前から僕はよく終電を逃した、と嘘をついて店に居座っていた。彼女ははじめは少し不思議に思ったようだが、「店長と仲良いですよね。なんか嬉しいです」なんて言ってたっけ。


彼女が帰宅し、二人だけになった店。唐突に


店:「ねえ、ぶっちゃけ彼女の事どう思ってるの?」


出た、お節介。


僕:「どうって、まぁ良い子だな~とは思ってる。少し変なとこあるけど」


店:「いやいや、そういう事じゃなくて。好きなのかって聞いてるの」


まぁそうか、そりゃそうだわな。そうくるよな。


僕:「んー、まぁそうだね、好きなんだろうね。でもまぁ、ここに来る奴らはみんなそうでしょ。」


店:「なるほど、なるほどね。私さ、あんたに雰囲気が違う、って言ったよね。あれね、初めて見た時からそう思ってたの。」


僕:「それはどうも。光栄に。。。思っていいのかは別として、褒め言葉として受け取っておくわ」


店:「うん。褒めてるよ。でもね、それを感じてたのは私だけじゃないの。じつはね…」


そこで店のドアが開く。そこに立っていたのは…


??:「あら、タイミング悪い?」

店:「んー、少し」

そんなはずない、明らかにバツが悪そうな表情で返す彼女。


素っ気なく見えるがこの男性、実は店長の彼氏。最近よりを戻したのだ。


店彼:「なんかごめんね、こんな遅くまで付き合わせちゃって」

僕:「僕?僕はいいのよ、楽しいから」


二人がよりを戻す前段階から、少しずつ僕らは打ち解けていた。一緒にお酒を飲んだり、朝まで語り合ったり。遅れてきた青春のような日々。


僕:「あ、そーいや話の続きは?」

店:「それはまたの機会にしておくわ。私これからイチャイチャしたいから」

店彼:「いや、許可してませんよ」


こんなやり取りをよく見る。幸せそうだな、たぶんバランスが良いんだろうな。羨ましい…いつかは僕も…


僕も?誰と?彼女と?それはないよ。



好きだよ、好きだけど…僕は…

心の中で呟く


違う。彼女の隣にいるべき人は僕じゃない。僕らはあまりにも不釣り合い。笑えるくらい。少しだけ涙が零れた。あーダメだ。


僕:「じゃあ僕は退散するので後はごゆっくり…」


店を後にする。季節は秋なのに、やけに肌寒く感じた。








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