第1章 第4話 初めての
何事も初めてというものは緊張の連続である。進級、進学、アルバイト、就職はもちろん、性生活に関しては殊更である。
中学に上がった頃、僕は友人にオナニーの仕方を聞き(今でも思い出すと恐ろしいのだが)、その日下校後早速試してみることにした。真夏の夕暮れ、お風呂場で聞かされた通りに右手を局部に伸ばし、上下に擦ってみる。当時のオカズは専ら同級生の水着姿を想像したものだ。覚えてからは少年誌のグラビア→週刊青年誌→映像へと移ったが、なにせ「汚れたり飛び散ったりしたら大変だ」とお風呂場を選んだのだから、脳内に残るそれを必死に思い起こした。
初めての発射。感動など無かった。驚きと同級生をオカズにしてしまったという得も言えぬ興奮と後悔が混じり合った感情、それだけだった。
それから十数年、まさか20代後半までこの行為を続けるなど夢にも思っていなかった僕は、女体に触れる事もないまま30歳を迎える直前。
流石に焦りはあった。周りにはそう見せぬようにしていたが、サトルは気が付いていたようだ。そして今に至る。
ここは超有名ソープ街、吉原。名前は聞いたことがあったが、どんな雰囲気でどんな場所かは全く分からなかった。某有名ネットMapで調べると、周辺のお店一覧がずらっと羅列される。ここマメ知識。
風俗遊びについては「良いと思う子を選べ」とサトルから伝授されていたので、風俗サイトでくまなくチェックし、ようやくたどり着いた子に入ろうと電話。
手が震えていたのを覚えている。電話は割と丁寧でここで少し不安は拭われた。
そして当日吉原に足を踏み入れると、意外とギラギラしていなくて驚いた。歌舞伎町で飲んだ事が何度かあったので、そんな街をイメージしていたのだが、呼び込みがある以外は静まり返っていた。お店がひしめき合っていても、街の賑やかさには関係ないのであろう。
そして店に入る。広めの待合室では今か今かと自分の番を待つ人が数名。とはいえソワソワしているのは自分だけ。何だか異空間にいるようだ。
名前を呼ばれる。緊張のご対面だ。
そしてプレイへと移るのである。。。
妄想するは男の性 津島椰子子 @tsushimayashiko
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