休日の秘密④
蔵の前までやってくると、ネコはオレたちを呼ぶかのように鳴いていた。
「よしよし。いま開けてあげるから待っててよ」
と鳴沢がつぶやきながら、ショートパンツのポケットからカギらしきものを取り出す。
――ってか、コインなんで普通にカギ持ってるんだよ。
オレは、何事もなかったかのように扉を開く鳴沢を問いただした。
「なんでカギ持ってるんだ?」
「前にこの辺を探検してたときに拾ったんだ。そうしたら、ここのカギだったらしくて、神主さんに『ネコたちに会いに来るなら預けておく』って言われたんだ」
「へぇ~、信頼されてるんだな」
「私、ネコが好きだしね――っと、開いたよ」
ガチャリという音と共に扉が開かれる。
すると、鳴沢の言うとおり中には数匹のネコがいた。
白色、三毛、キジトラ、ブチ模様、アビシニアンプルーにペルシャ猫――って、明らかに首輪の付いた飼い猫もいる。
そう考えると、ここはコイツらのたまり場なのだろう。鳴沢も、いつのまにかキジトラのネコを撫でてるし。
「ここには、良く来るのか?」
「うん。見晴らしもいいし、いい気分転換になるしね」
「クラスの連中とは遊ばないのか?」
「遊ぶよ。皆川さんに木津さんと遠木さんとは、RINEでよくメッセしてるし、たまの土日に遊びに行ったりもしてる」
「でも、こうして一緒にいるのは猫なんだよな?」
「まあね。あ、でも猫ってカワイイんだよ? このもふもふの肌触りも、肉球もスゴくいいの!」
「ネコ派かよ」
「安宍君はイヌ派?」
「どっちかっていうとイヌだな」
「へぇ~、イヌ派なんだ」
なんて言いながら、ネコを触っている鳴沢はなんだか楽しそう。
「安宍君も触ってみなよ」
「お、おう」
鳴沢に促され、恐る恐る白色のネコに触れてみる。
ちょっと噛みついたりしないか、心配。オレって、案外動物に好かれないからなぁ……。
――と思っていたら、白色のネコは自分から顔を近付けてすり寄ってきた。
「わ、わ、わわっ‼ 鳴沢、見てくれ。コイツ、自分から顔を近付けてきた」
「よかったじゃん。その子、甘え上手だからすぐに懐くよ」
「ふへへへっ……。こんなに懐かれたのは、ひさしぶりかも」
「でも、安宍君ってイヌ派なんだよね?」
「そうなんだけどさ。オレって、動物全般に逃げられちゃうんだよなぁ〜」
「あ〜そういうのあるよね。波長が合わないみたいな?」
「そうっ、それ! だから、こうやって懐かれるのはうれしくてさ……」
「よかったね」
なんだか感慨深い。
動物が好きと思っていても、逆に動物側から触らせてもらえるワケじゃないし。その意味じゃ一歩前進ってところか?
ならば、他のネコもきっと……って、逃げられたっ!?
ブチ模様のネコを触ろうとした瞬間、ネコたちはなぜか社殿の奥に走り逃げてしまった。
「あああっ~! なんで!?」
「ありゃりゃ、警戒させちゃったか。ブチの子は一番警戒心が強くてさ、私でもまだ触ったことないんだよね」
「そんなぁ~」
せっかく触れたと思ったのに残念。
やっぱり、オレって動物に嫌われてるのかな?
そんなことを考えていると、背後から足音が聞こえてきた。
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