第8話
〇
最近、何だかなぁ。
癒しは貴子のカフェだけ……。私、世界が狭いのね……。
最近、何だかなぁ気分なので、休日だけでも気分を上げようと思って、お洒落をした。
水玉柄の袖が広いカットソーに、同じ柄のかぼちゃぱんつ。足元はドクターマーチンの三ホールシューズ。ヴィヴィアンウエストウッドの鞄を合わせた。
駅前をまっすぐ歩いて小路に入る。緑が多くて気分が良い。
ガラス張りのドアを開ける。
佐木さんがいる。これは良い日だ。
佐木さんは一人だった。桜さんがいないなんて、珍しいな。
佐木さんは私に「良かったらご一緒に」と声をかけてくれた。
嬉しい。
ふんわりとした気持ちになったので、ロイヤルミルクティーを頼んだ。
「結婚することにした」佐木さんが、一言。
私は驚いて、暫く黙ってしまった。
〇
麻里から、子どもが産まれたと連絡が来た。
SNSにも、写真をアップしていた。
張り切って母親業をやっていますと、アピールが凄い。
しばらくすると、文字だけのSNSでは、麻里は愚痴ばかり呟くようになった。
子育てが、思うように行かないらしい。
今まで自分中心で生きてきたから、他人の気持ちを考えることが出来ないのだろう。
今までつるんでいた友達とも疎遠になっているようだ。
私の家では、祖母が死んだ。
何だかなぁ。
葬式で、一気にバタバタしている。
祖母にはよく子どもの頃、「女の子でしょ!」と叫ばれていた。
三つ下の弟は「男の子でしょ!」と云われることは無く、可愛がられていた。
男尊女卑というものが、この平成にも、確かにあるのだ。
おんなのこ、と叫ばれる度に、「おんなのこ」というものを嫌悪した。
スカートを履いて、正座して「はい」とばかり云う従妹は、よく褒められていた。
従妹は確かに素敵な女の子だったけれど、祖母の色眼鏡を通して見られていると思ったら、嫌な気持ちになった。
祖母だけではなく、「はい」と云うのは、大人からしたら「逆らえない子」に見られると思った。本能的に、嫌な気持ちだった。
女の子は、こうじゃなくちゃいけない。
女の子は、あれをしてはいけない。
親戚のおじさんに頭をなでられたりしたら、そのままニコニコしていなくてはならないのだろうか。
気持ち悪い。
気持ち悪いので、反対のことをしたくなった。
髪の毛は長くしないし、スカートは履かない。
そうしている内に、抑えること、が先に来るようになった。
私を呪縛していた祖母が死んだ。
死んだのに、私は何も変わらない。
〇
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