第25話 永遠に……6
雨が小降りになったころ車にもどった。からだをあたためるようにエンジンをかけ、見つめ合うと涙がこぼれてきた。
私はリマを抱き寄せてささやいた。
「ある朝めざめると、エプロン姿の君がぼくのそばに座った。
『朝食の準備ができているわよ』と声がした。
ぼくは『ありがとう』と答えた。それだけで、ただそれだけで、幸せだった」
彼女は笑顔を取り戻してささやいた。
「ある日わたしが、『あなたへプレゼントがあるわ』って、いったのよ。
でも、手にはワイングラスがあるだけ。
お酒を飲み干して、瞳を見つめて、
『それは、わたし。受け取っていただけるかしら?』
するとあなたは、
『こんなにうれしいプレゼントはないよ』って、わたしを抱き上げてくれたのよ」
私は微笑し、それから真剣に告げた。
「君は品物じゃない。何にもたとえようがない。
ぼくはきみを愛している。きみはぼくの命。
最後の、世界にたった一人の、永遠の恋人だ」
彼女は微笑し、唇をふるわせた。
「永遠に
あなたを愛しているわ」
「たとえこの世で結ばれなくても、
来世で・・」
「ええ、きっと。
かならず」
プラチナの十字架を交換し、小指をひとつにからませたとき、時が来た。
ふたりは、ぬくもりを忘れぬように唇を合わせふっと空中へ消えた。
天使は胸を打たれ、恋人達の未来をひそかに祝福した。そして災難つづきの若いカップルに告げた。
「あなたがたには、あなたがたが知らない熱い恋の果実として、玉のように美しい子が授かるでしょう」
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