第19話 恋のCOSMOS-6
頬に当たったのは恋人の涙だったのだろうか? そう思う間もなく雪が天を覆い大地をつつみはじめた。羽衣に隠れ、岩陰に寒いからだを温めるように寄り添った。
COSMOSの夢を思い出すと、ふたりは同じ夢を見ていた。とすると、あれは本当にあったこと?
私達は幸福だった。
「ここが、君が、銀河のはてだ。
それ以外に世界はないし、それ以外に恋はない」
彼女は私の愛情を鏡に映したように頬を赤らめた。
「このまま永遠に朝が来なければいいわ」
夜がふたりの抱擁を隠し、永久に朽ちない包装紙でやさしく包んでいた。ところが、雪はしだいに上がり、東の空がうっすらと白んできた。
「いじわるな太陽!
こんなに早く夜の帷を開けるなんて!」
彼女は光を避けるように私の胸に顔をうずめた。その髪をやさしくなでた。夜明けの街が水で洗われたように遠くに見えた。
なんて清々しい朝だろう! 私は外にでて大きな伸びをした。しばらくして振り返ると、恋人がいない。
「ここよ」と空の上から声がした。私は笑って後を追った。
風のように麓へと下り、鳥のように高い木の枝へとまった。雪は光に反射して白銀のように輝いている。
「ほら、見て」
街が夢の世界のように広がっていた。
「煙突からけむりが出ているわ」
「遠くにあって美しいもの・・。そして僕らは、木の上にいる」
「ふふッ。わたしたちは鳥人よ」
小鳥のようにKissを交わした。チンダル現象が空中を光の帯で飾っていた。次の瞬間、信じられないような光景に出会い、枝から落ちそうになった。
夢ではない。あわい虹の半円から幾千万という鳥の群が、光から生まれた天使のように放射状に広がって空を飛んでいるのである。
「鳥よ。光の鳥よ!」
色さまざまな鳥たちが空一面に広がりはじめ、プリズムでながめたような舞が広く大きく世界を領していった。
「星だ。暁の星のかがやきだ!」
「世界が、星と鳥とでいっぱいだわ!」
翼をはばたかせ、鳥たちとともに自由に空を飛び回った。
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