第27話 圧倒
<<光の存在を 敵に 示せ>>ーー
様子見とまでは言わないが、レイアは初手に
<<闇の存在を 敵に 示せ>>ーー
そして。
ゼノスが放つ闇魔法の
彼女は紛れもなく見た。
「なっ……」
その言葉とともに光が闇を飲みこみ、そのまま勢いは衰えぬまま向かってくる。
そして。
<<光よ 邪なる闇から 我が身を護れ>>ーー
慌てて張った光の魔法壁でやっと相殺する。
その
「ふふふ、君たち若い魔法使いはとりわけ速さを重視する傾向にあるが、それでは魔法一つ一つの威力は出ないだろうに」
まるで弄ぶかのように、ゼノスは笑う。
無論、レイアの
同じ
しかし、落ち込んでいる時間はない。
<<火の存在を 敵に 示せ>>ーー
レイアは次の戦略に早撃ち勝負に切り替える。属性魔法を数多く撃って制する作戦。不格好だとは思うが、背に腹は変えられない。これを防ぐには即座に相克する属性魔法を返さなければいけないが、同じレベルの速度も必要になってくる。
ゼノスがその回転に耐えられなくなり魔法壁を張った時点で極大魔法で仕留める。
速さならば。
速さであれーー
<<水の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<金の存在を 敵に 示せ>>ーー
<<闇の存在を 敵に 示せ>>ーー
「嘘……」
一瞬、勝負を忘れた。
無残に散り行く
レイアはその報いを受けた。
「きゃあああああああああああっ」
全ての
「誰が君より遅いと言った? 僕の魔法より速いのはあの忌々しいヘーゼン=ハイムだけだった」
「はぁ……はぁ……くっ」
「……本当にあの魔法使いは厄介だった。奴のおかげで僕は拠点を移動し続けることを余儀なくされた。しかし、君のような小娘に舐められるような覚えはないな」
「……っ」
実際その通りだった。きっと侮っていたのだろう。その理由もわかっている。ゼノスの闇魔法はアイツには及ばない。殺したいほど憎悪し、嫌悪し、追い求めたあいつには。そうタカを括って挑んだ戦いだった。蓋を開けてみれば、ゼノスは彼より遥かに強い。
『彼は僕より強いよ』
アイツの言った言葉が今になって頭に響く。珍しく謙遜をしたのだと思っていたが、今思えば彼は冷静に分析していた。だからこそ、裏ギルドの力を借りて、アリスト教徒と共闘までして。
「もう、終わりかい? てっきりもう少しやるかと思っていたが」
「……まだ」
終わるわけにはいかない。
終わらせるわけには。
「そうこなくっちゃ」
嘲笑うゼノスを睨みつけ、レイアは魔法を
その余裕は命取りだと。
いくら実力で負けていようと。
アリスト教は負けない。
<<猛き 女神よ 偽りの 亡者に 裁きの 光を>>ーー
門外不出の秘儀。
単体で出来る極大魔法をさらに超えた光の魔法。
あのアシュ=ダールでさえ行動不能にした魔法だ。
無数の光剣が出現し、ゼノスへと向かう。それは、光の
それが、彼に突き刺さる直前。
レイアは見た。
歪んだ笑みを。
果てなき闇を。
<<闇の盾よ 愚かな光に 永劫の 罰を>>ーー
一瞬にして相殺された光を。
「……嘘」
レイアはただ、呆然と見つめ続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます