第70話 雨と雪

 おきつね銀翔はぬらりひょんが術に意識が向いた事で出来た隙を逃さずに、怒涛の雨を降らせ始めた。

 通路の中に作った雪菜の雪の壁に向かい容赦なく叩きつけていき、ついには雪は崩壊して雪崩となって、かまいたちもカラス天狗も飲み込みぬらりひょんも飲み込んだ。

 そして先に銀翔が鞭で入れていた床の亀裂が裂けて床に大きな穴が開いた。

 ぬらりひょんもカラス天狗もかまいたちも大雪とともに穴の中に落ちた。


「雪菜! 今だっ!」

「はいっ!」


 銀翔はそのまま荒れ狂う水流を出し続け、そこに雪菜が冷気を起こし雪をさらに強く吹きつける。

 雪は銀翔の雨水をどんどん凍らすと、ぬらりひょん達をその氷の中に閉じ込めた。


「やったかしら?」

 カチカチの氷で敵の三人を氷漬けにして動きを封じたはずだった。

「!……いないわ」

「……ぬらりひょんめ、逃げおったか」

 かまいたちとカラス天狗も確かにとらえた感覚があったと言うのに、三人ともフウッと消えた。


 銀翔たちが到着した時にはもう姿がなかったので、ナナコ以外は目撃してはない巨大な蜘蛛も跡形もなく消え去っていた。


「幻術かもしれんな」

「ほとほと腹の立つ奴ね」

「ぬらりひょんを仕留められぬのは悔しいが、ナナコを連れてここから出るとするかの?」

「そうね。しかしどこから幻影だったのかしらね」

「もう早い段階からか……」

 銀翔はぬらりひょんがさほど反撃をして来ない事をいぶかしんではいたが、幻術と思えないほどの攻撃の威力はあった。

 ナナコにつけられた痣の呪いも幻術が出来るとは思えない。

「早くナナコの妖術も解いてやらねばな」

 銀翔はもともとナナコを守るつもりで学生に変化して紛れ込んだというのに、早くにぬらりひょんの気配を感じ異変を察知できなかった自身の不甲斐なさを責めては、ギリッと奥歯を噛み鳴らしていた。

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