第71話 人間界に来た理由
気を失うナナコに銀翔と雪菜は駆け寄り、銀翔は床に足をつきナナコの体をバンショウから抱き受ける。ナナコを見守っていたシンラとバンショウは少し後ろに下がる。銀翔はナナコの左腕を優しくつかみあげ、右手をかざして呪いの痣を消す解毒の術を施した。
ナナコの痣はみるみる消えてなくなり、銀翔はそのままナナコを抱き上げてもと来た道を目指して歩く。
「銀翔。ナナコにはもうしばらく私が雪女だということは黙っててくれる?」
雪菜が銀翔の横に来て一緒に歩きながら、銀翔が横抱きするナナコの意識のない顔を見た。
「ナナコは神獣使いであるからの。そのうち妖かしの気配は分かるようになるはず。いずれ、ばれるであろうに」
銀翔は雪菜の顔をじいっと可笑しそうに見ると雪菜はウフフッと楽しそうに笑った。
「ねえ。なんで私が里から人間界に下りてきたか分かる?」
「さあ? なにゆえじゃ?」
雪女の雪菜の着ている服が白の和服から中学校の制服に変わる。
銀翔はさきほど起こした狐火をここに来るときに、床に等間隔で道しるべに置いてきたので、それを頼りに人間界へと戻る。
「普通の人間になって友達とただ遊んだり学んだりしたかったのよ。だからもう少しだけナナコと普通の人間として接してもらいたいの。友達でいたいのよ」
うーんと銀翔は少々唸るがすぐに笑顔になった。
「承知した。まあナナコなら雪菜お前が雪女だと分かっても、友達でいることには変わらぬとワシは思うがのう」
銀翔が雪菜にまっすぐに瞳を見て笑いかけると雪菜は少しだけ頬を染めた。
(やだ。私、ちょっとだけドキリとした?)
雪菜は自分の心に戸惑っていた。
相手はおきつね銀翔。大好きな友達のナナコの恋人だって雪菜は知っていた。
恋仲の松姫とおきつね銀翔のことは、雪女の里にだって知れ渡るぐらい二人は仲睦まじいと有名だというのに。
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