第47話 ふたり、対峙する

 かまいたちが大鎌を振り上げてオロチに向かって空中に飛び上がった。

 オロチも牙涼刀がりょうとうを両手に握りしめながら空中に飛び上がった。

 二人はガキッ……ンと何度も上等な剣と鋭い鎌の武器同士の重たい金属音を立て斬りつけ合いながら地上に降りた。

「ちょっとはやるじゃねえか。かまいたち」

「ハハハッ。久しぶりだねえ、オロチ。ゾクゾクするさあ」

 かまいたちはオロチと戦えることが楽しくて仕方ないと言った顔をした。

 舌なめずりをしたかまいたちを至近距離でしばし対峙していたが、もう少し前に踏み込みオロチは間合いを詰めた。


 オロチは戦の経験と勘からくる感覚と考えから、かまいたちの握る執着の大鎌の大きさを測っていた。


 大鎌の懐は盲点なはずだ。

 なぜなら近づけば振り斬れない場所が大きな武器ゆえにできるからだ。

「大鎌はでかすぎんだよっ!」

 オロチは力強く地面を蹴ってかまいたちの懐に飛び込んで牙涼刀がりょうとうを一瞬の隙の出来たかまいたちの両胸に突き刺した!


 ギャアァァッ……。


 かまいたちの断末魔が響き渡り、すぐさまかまいたちは泡になった。

 そして、……消えた。

「思ったほどでもなかったな。あっけなかったなあ」

 オロチは久しぶりの妖怪退治をする自分のまあまあの体の動きに笑っていた。

 ぺろりっと舌を舐める。

 血の味が奥からした。

 食いしばりすぎたせいか。


 ふははっ、妖怪退治の立ち上がりにしちゃあ上出来か?


(――俺もまあ、妖怪の端くれだがな)


 再び短くオロチは自嘲気味に笑った。

 そして素早く踵を返し、銀翔と大切なナナコの元へ走るっ!


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