第46話 ぬらりひょんと銀翔

 雨を降らすのを止めた銀翔はナナコとなった松姫にチラッと視線を見やった。

「ワシの降らした雨のせいかもしれない」

「薫のなかの妖怪が正体を表したということ?」

「ああ。そもそもぬらりひょんは、うかのみたまの神様が封印したはずであるからなぜ薫になっているか分からぬ」

「うかのみたまの神様が」

 ただ取り憑いただけか。

 薫自体がぬらりひょんなのか分からなかった。


 強い妖気をかまいたちからも、ぬらりひょんからもビリビリと感じる。

 ぬらりひょんからは、かまいたち以上の妖気を痛いほど銀翔もナナコもオロチも感じる。


「神獣使いをコチラに渡せ。神にびる忌々しきキツネよ」

 そう言い終えるとぬらりひょんは薫の声で高らかに笑った。


「お前になど大事な松姫を渡すわけがないであろう」

 轟々ごうごうと銀翔の手のひらの狐火は怒りに呼応して燃え盛っていた。

 あたりはますます暗くなり夜のようになれば蝉時雨せみしぐれなどの喧騒けんそうも影に潜んで聞こえなくなった。

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