第10話 うさぎのじいやのお迎え

「ナナコよ。ご馳走様なのじゃ。美味であった」


 みりん干しを食べ終わったので一階にナナコと銀翔は階段で降りて行く。

 銀翔は青龍くんを頭にのせていた。

 降りた時にちょうど。

 コンコンと藤島手芸店のドアが控えめに叩かれた。


「だっ、誰? どなたですか」


 ナナコはまさか誰かが訪ねてくるとは思わなかったのでドアを開けるかどうか悩みました。


「ナナコ、開けてみるが良い」

「開けて大丈夫?」


(河童とかじゃない? 自分の川が荒らされて仕返しに来たとかじゃなくて?)


 ナナコはドキドキしながらドアを開けました。


「どなたですか?」


 カランカランとドアベルが鳴りながらドアが開かれた。


「えっ? 兎!」


 普通よりかなり大きく、ナナコより背が高い兎がドアの向こうにいました。

 器用に後ろ足で立ち藍色の着物を着ています。


「あっ、兎さん?」

「初めまして。藤島ナナコ様。私、銀翔様の側使いで兎の万象バンショウと申します。以後お見知りおき下さいませ」


 毛並みのモフモフふっくらとした真っ白なうさぎがニコリと笑ってナナコを見下ろしていました。


「銀翔様と青龍様をお迎えに参りました」


 その声を聞いた途端、ナナコはどうしたことか急に眠くなり視界がぐるりぐるりと回っていました。


 ――ぐる〜り、ぐるりん。



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