第10話 かっぱの罠

 ナナコはお皿に美味しそうに焼けた銀鱈と鯵のみりん干しをのせました。

 お客様用の塗り箸を添えました。


「どうぞ」

「では。いただきますのじゃ」

「フンフンッ」

 龍神の青龍くんも「いただきます」と言ってるかのようだった。


 行儀よくおきつね様の銀翔くんは席につき、箸で器用に身をほぐしながら食べ始めました。


 ナナコは鯵を食べやすいように小さくして青龍くんに食べさせてあげました。

「ピュイピュイィ」

 よほど美味しかったのか青龍くんは部屋を飛び回りました。


「さっきの“うかのみたまの神様”ってお稲荷様の神様?」

「そうじゃ」

「そんな偉い神様がなんで私に?」

「ナナコお主が神獣使いゆえ」

 しんじゅうつかい?

 ナナコは聞き慣れない言葉になんだか戸惑いました。

 ふと見た窓の外のお稲荷様がいっそうきらびやかな光で照っている気がします。

「うかのみたまの神様からの命でな。

 龍神の青龍くんをわしは風森町の綺羅川きらかわの川底のほこらの横で寝ているのを探し出したが河童の罠にはまってのう」

「カッパ?!」

 おきつね様の銀翔くんが、河童たちの拝んでいたほこらから龍神の青龍くんをったと思い罠をそこかしこに仕掛けてきたというのです。


「罠の一つが妖力を吸うものでな。あちこち河童の罠に傷を負わされた上に、わしと青龍くんはすっかり妖力を吸い取られて腹が減ったというわけじゃ」

「カッパ…」

 目の前におきつね様も龍神もいるのです。

 河童もいるんだとナナコは信じることができました。



「そこでナナコにお願いがあるのじゃ」

「お願い?」

「わしと一緒に青龍くんの新しい家を探してほしい」

 おきつね様の銀翔くんのお願いはナナコには途方もないことに思えてすぐに返事ができませんでした。

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