第9話 かっぱの罠

 ナナコはお皿に美味しそうに焼けた銀鱈と鯵のみりん干しをのせ、お客様用の塗り箸を添えた。


「どうぞ」

「では。いただく」

「フンフンッ」

 龍神の青龍君も「いただきます」と言ってるかのようだった。


 行儀よくお狐様の銀翔君は席に着き箸で器用に食べ始めました。


 ナナコは鯵を食べやすく小さくして青龍君に食べさせてあげました。

「ピュイピュイィ」

 よほど美味しかったのか青龍君は部屋を飛び回りました。


「さっきのうかのみたまの神様ってお稲荷神社の神様?」

「そうじゃ」

「そんな偉い神様がなんで私に?」

「ナナコお主が神獣使いゆえ」

 しんじゅうつかい?

 ナナコは聞き慣れない言葉に戸惑いました。

 ふと見た窓の外のお稲荷様がいっそう綺羅びやかな光で照っています。

「宇迦御魂神からの命でな。青龍君をわしは風森町の綺羅川きらかわほこらの横で寝ているのを探し出したが河童の罠にはまってのう」

「カッパ!?」

 銀翔君が河童達の拝んでいたほこらから青龍君をったと思い罠をそこかしこに仕掛けてきたというのです。


「罠の一つが妖力を吸うものでな。河童の罠で傷を負わされた上にわしと青龍君はすっかり妖力を吸い取られて腹が減ったというわけじゃ」

「河童……」

 目の前にお狐様も龍神もいるのです。

 河童もいるんだとナナコは信じる事が出来ました。


「そこでナナコにお願いがあるのじゃ」

「お願い?」

「神獣使いとしてわし達に力を貸して欲しいのじゃ」


 銀翔君のお願いはナナコには途方もない事に思えてすぐに返事が出来ませんでした。

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