第8話 おきつね様のご用事

 ナナコがキッチンで銀鱈と鯵のみりん干しを焼いていると、青龍君がふんふん鼻を鳴らしながらナナコの足元にやって来ました。

 青龍君はナナコに体をすりすりとつけておねだりしている。


「かっ、可愛い! 青龍君、ちょっと待っててね。ねえ、そういや青龍君も銀翔君も食べちゃいけないものとかあるのかな?」

「? ……さあ、知らんのぅ。たぶん何でも大丈夫ではないのか? ワシや神獣は人間よりは体は丈夫に出来ておる」


 銀翔君は見かけは小学生ぐらいの男の子なので、ナナコはそれ以上追求する気になれませんでした。


 ナナコは人間だから、人間じゃない神様達の何がだめとか神様の世界の常識とか分からない。


「どうして風森に? 何故傷を負って倒れていたの?」


 銀翔君は何かを思い出すように天井を見上げていた。


「風森町にはずうっとおる。ナナコお主の御先祖もすべて知っているぞ」

「えっ。そんな昔から?」

「流れる時が違うのではないのかの? ワシには長い年月としつきには思えんのだからな。ワシは宇迦之御魂神のご用事でお主に会いに来たのだ」

「わ、私に?」


 ジュワッと網の上の魚から音がしました。

 みりん干しがそろそろ焼き上がります。

 いつの間にか外の雨がんでいました。

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