第8話 お粥を食す

 ナナコは小さめの土鍋を出してきて、水を注ぎ鶏ガラスープを入れ米を炊きました。そこに卵を割り箸で溶きほぐして入れ、ひとつまみの塩で味つけをして卵粥を作りました。

 ふわりと卵が優しく鮮やかに仕上がりました。

 とっても美味しそう。

 さらにネギをパラパラちらしてからお粥をお椀に入れ、龍神の青龍くんとおきつね様の銀翔くんの前にどうぞと出して進めました。


「熱いから気をつけてね」


 青龍くんにはナナコがフーフー冷ましてから口元に持っていくとカプッと木のスプーンごとくわえました。

 青龍くん目が細くなり喜んでいます。


「ふーふー。……うむ。ほんのりとした塩気と卵と米がふっくらとしておって。ナナコ、上出来じゃ。この粥はとてもうまいのう」


 銀翔くんも目を細め眼尻が下がり、口元はにっこり。銀翔くんは優雅に卵粥をゆっくりと味わっているようでした。

 銀翔くんの頬に赤みがさし、血色が良くなります。温かい卵粥が雨で濡れ冷えた体をじんわりとあっためていきます。


「魚のみりん干しも食べる?」

「よいのかの?」

「うん。うちのお父さんが釣ってきた魚だよ」


 景色は相変わらずセピア色ですが、冷蔵庫にはちゃんとうちと同じように食材が入っていました。

 ナナコはここが自分が住む場所と違う世界なのが信じられないけど、誰も人がいる気配がないから本当なんだろうと思っていました。


 ナナコは銀鱈と鯵のみりん干しをじわじわと焦げないように真剣な面持ちで様子を見ながら網でじっくりと焼きます。

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