第3話 出逢いは雨のなか
ぽつぽつりと降ったかと思うとザザザーッと激しい音を立て雨はあっという間に滝の様な土砂降りになった。
視界が白くなる。勢いのある雨が地上に降り注ぐ。
学校からナナコが藤島手芸店に急な雨に慌てて走って帰って来た。
夏休みだがナナコは部活動の為に中学校に行っていた。
鞄を頭の上で両手で持ち雨よけにしながら手芸店の裏の扉から駆け込んだ。
「ただいまー!」
手芸店の我が家に帰って来たナナコはいつもなら元気な声で帰りを喜んでくれる母も祖母もいないことに気づいた。
「お母さん? おばあちゃん?」
七月の蒸し暑い日に手芸店のエアコンはほどよく効いてます。
「買い物かな? だめじゃない。店番にどちらかいないと。不用心だな」
ナナコは雨に濡れたので着替えをしてから店番をします。
「なんか変。どこかおかしいな」
違和感はずっとありました。
誰もいないのです。
雨でも田舎の店の建ち並ぶ商店街には人がいないことはありませんでした。
雨の日も商店街はのんびりとしていて長時間いられる喫茶店などもあります。
お肉屋さんはちょっとしたひさしが雨宿りにもうってつけのベンチで揚げたてのコロッケなどを食べる人が絶えずいます。
どの店の人たちも親切で雨宿りして長居してしまう。
「いつもは誰かしら商店街にはいるのに」
今日は
あれ? とナナコは疑問が止まりませんでした。
どうしたことでしょうか。
ナナコの瞳に映る景色がセピア色に染まっているのです。
ナナコは雨足がますます強くなる外の景色を商店街の道路の反対側の窓から見ていました。
そちら側の窓からは小さな山の鎮守の杜と朱色の稲荷神社の鳥居がよく見えセピア色の景色の中で鳥居だけが朱に光って見えていました。
「えっ?」
バタンと小学生ぐらいの男の子が手芸店の裏で倒れた姿が目に飛び込んで来ました。
ナナコは慌てて裏のドアから出て行く。
「大丈夫っ!?」
ナナコは雨も厭わず傘をさすことも忘れ男の子に駆け寄りました。
雨は相変わらずザーッと天から降り注ぎ続けています。
男の子はたくさんの傷を負って気を失っていました。
左手には何かを大切に握りしめています。
――これが、ナナコとお狐銀翔との出逢いです。
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