第2話 ナナコと夏祭り

 風森町かざもりちょうの小さな手芸店を営む藤島家に一人娘のナナコがいる。


 ナナコは母さんと父さんと祖母と暮らしております。


 父さんは漁師でたまにしか帰ってきません。


 ナナコは生まれた時からお狐様の護る稲荷神社を事あるごとに参拝し住まう風森を一望できる見晴らしのいい広い境内で遊んだりして健やかに育ちました。


 ナナコや町の人々の一番の稲荷神社での楽しみは夏祭りです。


 夏祭りの日はお囃子はやしが聴こえる稲荷神社の鳥居をいくつかくぐると提灯ちょうちん露店ろてんが建ち並びお面屋に射的や輪投げ金魚すくいにボールすくい型抜き綿飴に焼きとうもろこしあんず飴に焼きそば……楽しくて美味しいお店が人々を待っています。


 打ち上げ花火も上がるのです。

 夜空に大輪たいりんの火の花がドドンとお腹に響く大きな音をさせ鮮やかな彩りを発光させ上下左右と方々広がり咲き散ります。

 ああ、なんと心がワクワクすることでしょうか。

 花火は厄災の願いも込められています。

 終わる頃には皆の鼻を火薬の匂いがくすぐり郷愁を誘う。


 ――ああ、今年もやって来る。


 鎮守の杜のお狐様が出迎える神社は風森稲荷神社でございます。


 今年も暑い胸が踊る夏祭りの季節がやって参ります。




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